【学習ガイド】『基幹*物理III -波動・原子物理-』

※ 旧「典型入試演習」を新「標準演習」に,旧「良問の嵐」を新「典型入試演習」に差し替えました.ご注意ください.
※ 旧「良問の嵐」=新「典型入試演習」の部分は,現行の製本テキストに収録されていません.新版テキストを鋭意作成中です.
※ 新「良問の嵐」は来年度以降作成予定.

入試物理における波動分野の位置付け

波動分野は,「物理」というより,「中学理科の延長」と捉えるのがよいかもしれません.なぜなら,一般に物理では,自然現象が起こる「仕組み」を学ぶのですが,高校物理の波動分野では,「波が生じ,伝播する仕組み」をほぼ扱わず,水面波や音波,さらには光(電磁波)などの存在を前提にした上で,それらがどのような振る舞いをするかという議論をするからです.それゆえ,必然的に学習法も他分野と変わってきます.

波動を得意にする学習姿勢

力学・熱力学・電磁気の分野では,原理からの論理的な思考・体系的な学習が重要でしたが,一方で,波動分野では,単元ごとに現象を網羅していくという学習法が効果的です.波動分野は単元ごとのつながりが薄く,重要な問題パターンを網羅していけば対策できてしまうということになります.ただし,効率的・効果的にパターン分けされておらず,やみくもに問題が羅列されているだけの問題集に取り組んでも力はつかないので注意してください.

力学が得意なのに波動がまったく苦手な学生に多いのが,作図による理解をサボっているパターンです.入試ではどちらかといえば,数式より作図による理解の方が優先されます(近年では数式に重きをおいた出題も増えていますが,それでも).作図を優先して学び,数式と結び付けていく学び方がおすすめです.

図形的な考察は,閃きやセンスが必要であるという誤解が蔓延していますが,実際は基礎となるパターンを押さえておけば,難しい問題も基礎の応用で解くことができます(世の中に図形的な考察をパターン化しているコンテンツが少なすぎます).また,近似計算は,(波動分野に限りませんが)特に波動分野で多く使うので,ここで慣れておくのがよいでしょう.

※ 原子物理分野に関しては,問題のバリエーションが非常に少ないため,標準演習と典型入試演習の区別なく,ただ「演習」としています.
※ ×印の問題は現状では解説動画がありません(テキストに詳しい解説がついています).受講者の方からの要望があれば作成していく予定です(Communeにてご要望お寄せください).

19世紀後半から20世紀前半にかけて,それ以前の物理学(古典物理学)で説明できない現象が発見され,それが徐々に説明されていくことで,新しい物理学の理論(量子論や相対論)が建設されていきました.原子物理分野では,その歴史的な過程における有名実験や仮説について学びます.それゆえ,完成された理論体系を学ぶわけではなく,問題ごとに必要な考え方を覚えていかねばならないことに注意してください.その代わり,各問題で扱うテーマは基本的に当時のものですから,この分野の新奇な入試問題はほとんど存在せず,重要な問題例をしっかりマスターしておけば,ほとんどの場合に満点近くを狙うことができる分野です.

この分野は対策が遅れがちな受験生が多いですが,焦って先にやろうとするよりも,他分野の実力が備わった後に短期間で集中的に学ぶのが効率よく効果的です.また,標準大と難関大で出題に大差はありません.ただし,最難関大で,細かい知識が問われたり,見慣れない設定の出題がされることも稀にあります.