この記事は,映像講義「入試物理ファンダメンタルズ[力学]」後半部分の要点を誌上講義化したものです.
§ 中心力と天体の運動
中心力の下での運動における面積速度保存則,天体の運動におけるケプラーの法則を扱います.天体の運動については歴史的な経緯も紹介します.
◆面積速度保存則
中心力のみを受けて動く物体の面積速度は保存する.これを面積速度保存則という.
\[\begin{align*} \text{面積速度 } h &= \left( \text{単位時間あたりに動径が描く面積} \right)\\ &= \frac{1}{2} r v \sin \phi \end{align*}\]
《解法Fr例題11》
◆万有引力
万有引力
\[F_G = G \frac{M_1 M_2}{r^2}\]
位置エネルギー
\[U_G = – G \frac{M_1 M_2}{r}\]
万有引力定数
$G \fallingdotseq 6.67 \times 10^{-11} \, \text{N} \cdot \text{m}^2 / \text{kg}^2$
《例》
図
運動方程式(中心方向)より,
\[\begin{split} &m \frac{v^2}{r} = G \frac{M m}{r^2}\\ &\therefore v = \sqrt{\frac{G M}{r}} \end{split}\]
《例》
図
力学的エネルギー保存則より,
\[\frac{1}{2} m V^2 + \left( – G \frac{M m}{2r} \right) = \frac{1}{2} m v^2 + \left( – G \frac{M m}{r} \right)\]
面積速度保存則より,
\[\begin{split} &\frac{1}{2} \cdot 2r \cdot V = \frac{1}{2} r v\\ &\therefore v = 2V \end{split}\]
よって,
\[v = 2 \sqrt{\frac{G M}{3r}}, \quad V = \sqrt{\frac{G M}{3r}}\]
◆地表付近の重力加速度
地球の質量を$M$,半径を$R$,物体の質量を$m$,物体が地表からの高さ$h$にあるとき,物体に働く重力$f$は次の式で表される.
\[\begin{align*} f &= G \frac{M m}{(R+h)^2}\\ &\fallingdotseq m \frac{G M}{R^2} \end{align*}\]
よって,地表付近での重力加速度$g$は
\[g = \frac{G M}{R^2}\]
となる.
◆ケプラー則
太陽のまわりを周回する惑星について、以下が成り立つ.
- (Ⅰ) 各惑星の軌道は、楕円軌道で焦点の1つが太陽に一致する
- (Ⅱ) 面積速度保存則
- (Ⅲ) 各惑星の$\frac{\left( \text{周期} \right)^2}{\left( \text{長半径} \right)^3}$の値が一致
太陽→地球,惑星→衛星 などとおきかえても成り立つ.
§ 動く座標系
混乱の起こりがちな動く座標系における慣性力(架空の力)を扱います.将来,物理学を深く学びたい方のために,特殊相対性・等価原理についても簡単に触れます.
◆慣性力(架空の力)
慣性系に対して加速度$\vec{A}$で動く座標系では,物体に$-m\vec{A}$の架空の力が働くかのように扱う.
◆遠心力
角速度$\Omega $で回転する座標系での架空の力のひとつ.
\[\text{遠心力} = \begin{cases} \text{軸から遠ざかる向き}\\ m R \Omega^2\end{cases}\]
$R$は軸からの距離.
《解法Fr例題12-1》
《解法Fr例題12-2》
§ 剛体
◆剛体のつりあい
剛体がつりあう条件は以下である.
\[\begin{cases} \text{並進しない} \Rightarrow \text{力のつりあい}\\ \text{回転しない}\Rightarrow \text{力のモーメントのつりあい}\end{cases}\]
\[\begin{align*} \text{(力のモーメント)} &= r \times F \sin \phi \\ &= F \times \text{(中心と作用線の距離)}\end{align*}\]
ただし,反時計回りを正とする.
§ 重心
◆重力のモーメント
重力のモーメント
\[m_1 g x_1 + m_2 g x_2 = (m_1 + m_2) g \cdot \underbrace{\frac{m_1 x_1 + m_2 x_2}{m_1 + m_2}}_\text{重心}\]
剛体に働く重力は、重心の一点に集中して働くと考えてよい.
均一な剛体の重心は「真ん中」である.
《解法Fr例題16》