【誌上講義】電磁気ファンダメンタルズ[磁気編]

この記事は,映像講義「入試物理ファンダメンタルズ[電磁気]」後半部分の要点を誌上講義化したものです.

§静磁場

ここでは,静磁場中での荷電粒子の運動と電流の作る磁場について学びますが,難しいことはないでしょう.特に,電流の作る磁場は3つの場合(直線電流,円電流,ソレノイド・コイル)の公式をただ暗記するだけになっています.

◆静磁場の導入

電荷が電場を作るように,磁極が磁場を作る.

静磁場に関しては次のことを学ぶ.

  •  磁場中で運動する電荷はローレンツ力を受ける.
  •  磁場中で電流が流れる導線にアンペール力を受ける.
  •  電流は周囲に磁場を作る ⇒ 3パターンの公式を覚える.

なお,磁場を表す量としては,磁束密度を用いる.

◆ローレンツ力

磁場中で運動する荷電粒子はローレンツ力を受ける.磁束密度の大きさを$B$,電荷を$q$,速さを$v$とする.ローレンツ力の大きさは,

$$ \begin{cases} \text{磁場と速度が平行なとき:}f=0~,\\ \text{磁場と速度が垂直なとき:}f=|q|vB~. \end{cases} $$

向きはフレミングの左手則に従う($q<0$なら逆向き).一般の場合には,磁場か速度を分解して考えればよい.

ローレンツ力の重要な性質として,常に速度と直交するため仕事をしない.つまり,運動エネルギーを変化させないため,速さはそのままで速度の向きのみを曲げてゆく.

《例》一様磁場中での荷電粒子の等速円運動.
《解法Fr例題2-1》荷電粒子の電場での加速と磁場中での等速円運動.

※ ベクトルの外積に慣れている者は,ベクトル表記で$\vec{f}=q\vec{v}\times\vec{B}$としてもよい.

◆アンペール力(電流が磁場から受ける力)

磁場中で電流が流れる導線は,アンペール力を受ける.磁束密度の大きさを$B$,電流の大きさを$I$,導線の長さを$\ell$とする.アンペール力の大きさは,

$$\begin{cases}\text{磁場と電流が平行なとき}:F=0~,\\\text{磁場と電流が垂直なとき}:F=IB\ell~.\end{cases}$$

向きはフレミングの左手則に従う.一般の場合には,磁場を分解して考えればよい.

《例》数値例.
《解法Fr例題2-2》アンペール力と重力のつりあい.

◆ローレンツ力とアンペール力の関係

導線内の自由電子が受ける力の合力として,アンペール力を理解することができる.

◆電流が磁場を作る

電流の周囲には磁場が生じる.電流が作る磁場を決定するための法則(ビオ=サヴァール則)は高校範囲外であり,次の3つの具体例の結果を公式として覚える.

無限に長いと見なせる直線電流の距離$r$離れた地点での磁束密度:

$$B(r) = \mu_0\frac{I}{2\pi r}$$

円電流(半径$a$)の中心での磁束密度:

$$B_\text{中心} = \mu_0\frac{I}{2a}$$

無限に長いと見なせるソレノイド内部(単位長さあたりの巻き数$n$)での磁束密度:

$$B_\text{内部} = \mu_0 nI$$

ここで,$\mu_0$は真空の透磁率であり,いずれの場合も電流の向きと作る磁場の向きは,右手(右ねじ)の関係を満たす.

《例》公式当てはめ.
《例》数値例.
《解法Fr例題2-3》直線電流が作る磁場の公式.

◆直線電流の間に働く力

§電磁誘導[前編]

電磁誘導は,電磁誘導によって生じる誘導起電力の決定→回路と力学の法則の連立→エネルギー収支の考察という流れの融合的な問題になることが多いです.しかし,ここまできちんと学習してきた方にとっては,新しいことが「誘導起電力の決定」と「電磁誘導におけるエネルギー変換」の2点のみになりますから,この単元ではまず「誘導起電力の決定」を徹底的に扱います.

電磁誘導によって生じる誘導起電力については,静磁場中で回路(の一部や全体)が動く場合と,磁場が時間変化する場合でしっかり分けて議論することが大事です.「vBl公式」とファラデイ則の使いわけ,役割の違いをきちんと説明している書籍を見たことがありません.是非,JUKEN7で本当のことを学んでください.それが一番分かりやすくて楽しいんです.

◆電磁誘導の導入

◆電磁誘導の分類

◆「vBl公式」

◆ファラデイの法則

§電磁誘導[後編]

この単元ではいわゆる融合問題をメインに扱いますが,新しく理解しなければいけないのは「電磁誘導におけるエネルギー変換」の部分になりますから,この部分の理解に特に力を入れて学習します.

◆電磁誘導におけるエネルギー収支

§コイルを含む回路

回路素子として,電池,抵抗,コンデンサに続き,コイルについて学びます.受験生の理解が浅いポイントは,「誘導起電力の向き」と「電位の高低」の関係と,「コイルの電流の連続性」についてですので,そこを重点的に解説しています.それ以外は特に難しいことはないでしょう.

◆回路素子のおさらいとコイルの紹介

コイルの性質について覚えておかないことは以下の3点.自己インダクタンス$L$のコイルに電流$I$が流れているとして説明する.

電流の向きに$L\dfrac{dI}{dt}$だけ電位が下がる.電流の向きを正として$\mathcal{E}=-L\dfrac{dI}{dt}$の起電力が生じる,という表現をすることも多いが,まずは前者の表現を押さえ,その上で後者との整合性を理解してゆくのがよい.さらに電流と逆向きを正として,$\mathcal{E}^*=+L\dfrac{dI}{dt}$の起電力(逆起電力)が生じる,という表現も存在するが,混乱を生みやすいため,本稿では用いない.

コイルの蓄えるエネルギーは,次の公式を押さえておく:

$$U_\mathrm{L}=\dfrac{1}{2}LI^2~.$$

コイルの電流は必ず連続的に変化する.これは,仮に$I$が不連続に変化すると,その瞬間に起電力が発散してしまい矛盾するからである.もしくは,$I$が不連続に変化すると,$U_\mathrm{L}$が不連続に変化し,その瞬間に供給される電力が発散してしまい矛盾する,と言ってもよい.まずは問題を解く中で慣れていくのがよいだろう.

◆コイルの内部構造

◆補足:コイルに生じる起電力の向き

【FNDs(基礎講義)】交流回路

交流回路といえど,回路の状態を決定する手法はこれまでと何ら変わりありません.ですので,典型的な問題を押さえつつ,細かな知識(実効値,リアクタンス,インピーダンス,平均電力など)を仕入れていけば,本番でも容易に高得点が狙える単元です.ただし,教科書通りのやり方は非常に効率が悪いので,その点だけ注意が必要です.

◆リアクタンス・位相のずれ

各素子に交流電圧$V=V_0\sin(\omega t)$をかけたときの電流を$I$とすると,次の形で表すことができる:

$$I = \frac{V_0}{\text{(リアクタンス)}}\sin\left\{\omega t+\text{(位相遅れ)}\right\}~.$$

◆インピーダンス

◆平均消費電力・実効値

実効値については,次の定義のみを押さえておけばよい:

$$\text{(実効値)}=\frac{\text{(振幅)}}{\sqrt{2}}~.$$

※ 元の定義は「交流の平均消費電力と電力が等しくなるような直流の値」であるが,大学入試で気にする必要はなかろう

電力の時間平均の計算は頻出であるが,次の計算のみ分かっていればよい:

$$ \begin{split} &\overline{ \sin (\omega t) } = \overline{ \cos (\omega t) } = 0~,\\ &\overline{ \sin^2 (\omega t) } = \overline{ \cos^2 (\omega t) } = \frac{1}{2}~. \end{split} $$

さらに,$\overline{ \sin (\omega t)\cos (\omega t) } = \frac{1}{2}\overline{ \sin (2\omega t) }=0$もすぐ出てくれば便利であろう.

※ 平均の定義は実は色々ある(相加平均,相乗平均,調和平均,…).ここでは周期$T$の周期関数$f(t)$の平均として,$\overline{f(t)} = \frac{1}{T}\int_{t}^{t+T}f(t)\,dt$を採用しているのであるが,大学入試で気にする必要はなかろう.