この記事は,映像講義「入試物理ファンダメンタルズ[電磁気]」前半部分の要点を誌上講義化したものです.
§ 静電場
静電気力(クーロン力)の下での電荷の運動は,力学の延長線上にあります.そのため,力学の学習がある程度進んでいれば不安を感じるような単元ではありません.要所は,電場・電位についてです.入試物理において,静電場の求め方は以下に登場する3パターンになります.これらをしっかり整理して学習すれば比較的短期間にマスターすることも可能でしょう.
◆ 静電気力の導入
電気を持った物体の間には力が働く.これを静電気力・クーロン力という.
物体の持つ電気的な性質を定量化したものが電荷・電気量である.原子を構成する粒子のうち,電子は負の電荷${-e}$を持ち,陽子は正の電荷${+e}$を持つ.ここで,${e \simeq 1.6\times 10^{-19}\,\text{C}}$は,電気素量・素電荷よばれる定数である.なお,電荷の単位には,C(クーロン)を用いる.
※ 本来的には電流の単位Aが先に定義され,それからCが定義されるが,ここで気にする必要はない.
《例》%未完
$6.0 \times 10^{23}$個の電子の電気量は?
\[1.6 \times 10^{-19} \, \text{C} \times 6.0 \times 10^{23} = 9.6 \times 10^4 \, \text{C}\]
◆ クーロンの法則
2つの点電荷(大きさの無視できる電気を帯びた粒子)の間に働くクーロン力は,各々の電荷${q_1}$,${q_2}$に比例し,距離$r$の2乗に反比例する.すなわち,クーロン力の大きさ${f}$は次式となる:
$$f = k_0\dfrac{q_1q_2}{r^2}~.$$
電荷が同符号($q_1q_2>0$)であれば斥力,異符号($q_1q_2<0$)であれば引力である.この事実をクーロンの法則といい,比例定数$k_0 \simeq 9.0\times 10^9\,\mathrm{N\cdot m^2/C^2}$は,クーロンの法則の比例定数とよばれる.
また,このクーロン力の位置エネルギーは,無限遠を基準として,次式となる:
$$U = k_0\frac{q_1q_2}{r}~.$$
《例》
$q_1 = q_2 = 1\,\text{C}$,$r = 1\,\text{m}$なら,
\[\begin{align*} f &= 9.0 \times 10^9 \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2 \times \frac{(1\,\text{C})^2}{(1\,\text{m})^2} \\&= 9.0 \times 10^9 \, \text{N}\end{align*}\]
◆ 電場と電位の定義
ある点に電荷を置いたとき,その電荷がクーロン力を受けるのであれば,その点には電場が在る,という.量としての電場・電界$\vec{E}$は次のように定義される:
$$\vec{E} = \text{(単位電荷を想定し,受けるクーロン力)}~.$$
また,電位を次のように定義する:
$$\phi = \text{(単位電荷を想定し,生じる位置エネルギー) }~.$$
電場の単位はN/Cであり,電位の単位にはV(ボルト)を用いる.$\text{V}=\text{J/C}$である.
※※ このように定義した$\vec{E}$を用いて,空間に蓄えられた電気的なエネルギーの密度を$\frac{\varepsilon_0}{2}|\vec{E}|^2$と表すことができる.
《例》
電場の大きさ$E = 5 \, \mathrm{N/C}$,電荷$q = 2 \times 10^{-6} \, \mathrm{C}$,電位$\Phi = 12 \, \mathrm{V}$の場合:
クーロン力の大きさ
\[\begin{align*} F &= q E\\ F &= 2 \times 10^{-6} \, \mathrm{C} \times 5 \, \mathrm{N/C}\\ &= 1 \times 10^{-5} \, \mathrm{N}\end{align*}\]
位置エネルギー
\[\begin{align*} U &= q \Phi\\ &= 2 \times 10^{-6} \, \mathrm{C} \times 12 \, \mathrm{V}\\ &= 2.4 \times 10^{-5} \, \mathrm{J}\end{align*}\]
《例》2つの電荷$+Q$が,座標$(0, L)$と$(0, -L)$に配置されているとする.
電場は成分ごとに,
\[\begin{align*} E_x &= k_0 \frac{Q}{(2L)^2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \times 2\\ &= \frac{\sqrt{3}k_0 Q}{4L^2}, \\ \quad E_y &= 0 \end{align*}\]
電位は
\[\Phi = k_0 \frac{Q}{2L} + k_0 \frac{Q}{2L} = \frac{k_0 Q}{L}\]
《例》
$Q(Q>0)$
電場の大きさ$E = k_0 \frac{Q}{r^2} = \frac{Q}{r^2}$
電位$\phi = – k_0 \frac{Q}{r}$
《例》
$-Q(Q<0)$
\[\begin{split} &E = | k_0 \frac{- Q \cdot 1}{r^2} | = k_0 \frac{Q}{r^2}\\ &\phi = k_0 \frac{- Q \cdot 1}{r} = – k_0 \frac{Q}{r} \end{split}\]
《解放Fr例題1-1?》
◆ 平行一様電場
至る所で同じ向きで同じ大きさであるような電場のことを,平行一様電場という.それについて考えよう.大きさを$E$とすると,電場の向きに距離$d$隔たった2点間の電位差・電圧(電位差のことを電圧ともいう)は次式で与えられる:
$$V = Ed~.$$
ただし,電場の指す向きの方が低電位になる.
《例》
$V = 10 \, \text{V}$,$d = 2 \, \text{m}$ の場合,
\[E = \frac{V}{d} = \frac{10 \, \text{V}}{2 \, \text{m}} = 5 \, \text{V/m}\]
◆ 電場と電位の関係
一般の電場と電位の間に,次の関係が成り立つ:
- 電気力線は,等電位線と直交し,高電位から低電位へ向かう向き.
- 電場の強さは,等電位線どうしの$\text{(電位差)}\div\text{(間隔)}$で近似される.
《解放Fr例題?》
◆ 電気力線
電場を表現する道具として電気力線がある.電気力線は,次の性質を満たすように描く.
- 接線の向き ⇔ 電場の向き
- 垂直な単位面積を貫く本数 ⇔ 電場の強さ
- 電荷$Q$から$\frac{Q}{\varepsilon_0}$本出る(ガウスの法則).
- ピンと張ろうとし,互いに反発
なお,$\varepsilon_0 \simeq 8.85\times 10^{-12}\,\mathrm{F/m}$は,真空の誘電率とよばれ,クーロン則の比例定数$k_0$との間に,次の関係がある:
$$k_0 = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}~.$$
◆ 電場の求め方の整理
- 点電荷たちに作る電場 ⇒ 電場の定義に従う.
- 拡がった電荷分布が作る電場 ⇒ 電気力線を用いる.
- 電位分布が既知の場合 ⇒ 電場と電位の関係を用いる.
◆ 位置エネルギーの基準
位置エネルギー$U(x)$には,定数の分の不定性があり,$U_0$を任意の定数として$U(x)+U_0$を位置エネルギーと再定義しても矛盾はない.位置エネルギーがゼロになる状態を,位置エネルギーの基準とよぶ.
§ 回路の基本
受験生が最も苦手とする電磁気分野ですが,回路の問題をマスターしてしまうと,安定した得点源にできて精神的に有利になる上,他の部分の見通しも一気によくなります.
回路の状態は,回路素子の性質を与えられた下で,電荷保存則とキルヒホッフの第2法則により一意に決まります.まずは,回路素子として,電池,抵抗,コンデンサの性質を学びましょう.そして,それらが組み合わされた回路の状態の決定を徹底的に訓練します.特に,コンデンサの内部構造に触れる問題には慎重に取り組みたいところです.内部構造に触れない問題と触れる場合で解法が異なるという勘違いが,受験生の混乱を生んでいます.結局は,電荷保存則とキルヒホッフ則さえ正確に立てられればよいということを理解し,安心して学習し続けられるように配慮したカリキュラムになっています.
◆ 回路の導入
これから色々な回路を扱っていく.回路の状態を決定するためには,各回路素子の性質を押さえた上で,電荷保存則とキルヒホッフ則を連立すればよい.性質を覚えておくべき素子は,とりあえず,電池・抵抗・コンデンサである.
※ コイルは後回しでよい(電磁誘導の後に扱う).
◆ 電流
電流の向きは,正電荷の流れの向き・負電荷の流れと逆向き(金属導線であれば,電流の向きは自由電子の運動の向きと逆向き)であり,電流の大きさは,「導線断面を単位時間あたりに通過する電荷の大きさ」で定義される.
電流の単位は,A(アンペア)を用いる.${\mathrm{A}=\mathrm{C/s}}$である.
《例》
$\varDelta t = 2 \, \text{s}$ の間に,$\varDelta Q = 10 \, \text{C}$ が通過した場合,
\[I = \frac{\varDelta Q}{\varDelta t} = \frac{10 \, \text{C}}{2 \, \text{s}} = 5 \, \text{A}\]
◆ 各素子の性質
電池は,起電力の分だけ電位差を生じる装置である.起電力${V_0}$の電池では,負極に対して正極が${V_0}$だけ高電位に設定される.
※ その仕組みについてはブラックボックスとしてよい.
電気抵抗に電位差・電圧をかけると電流が流れる.この際,電流と電位差・電圧は比例関係にあり,その事実をオームの法則という.抵抗値${R}$の電気抵抗に,電流${I}$が流れるとき,電流の向きに沿って${RI}$だけ電位が下がる.
コンデンサは,2つの電極が異符号等量(符号が逆で同じ大きさの量)に帯電し,電位差・電圧に比例した大きさの電荷を蓄える.その比例定数${C}$を静電容量・電気容量という(単に容量ともいう).容量${C}$のコンデンサが電荷${\pm Q}$を持つとき,負極に対し正極が${\dfrac{Q}{C}}$だけ高電位になる.
※ 仕組みについては後に学ぶ.とりあえずそういうものと思っておく.
《例》
抵抗 $R = 5 \, \Omega$、電流 $I = 3 \, \text{A}$ の場合,
\[R I = 15 \, \text{V}\]
《例》
コンデンサーの静電容量 $C = 2 \, \text{F}$,電荷 $Q = 5 \, \text{C}$ の場合,
\[\frac{Q}{C} = 2.5 \, \text{V}\]
◆ キルヒホッフの第1法則
回路の分岐点において,流入する電流の和と流出する電流の和は等しい.この事実をキルヒホッフの第1法則という.
※ 電荷保存則を前提とすれば当然の事実ゆえ,いちいち断らずに使ってしまうことが多い.
《例》
◆ キルヒホッフの第2法則
キルヒホッフの第2法則は,閉回路上の任意の2点間の電位差は,どの経路をたどっても等しくなる,というものである.このことを,閉ループでの起電力と電圧降下が等しいなどと表現することも多い.
※ 単に「キルヒホッフの法則」といった場合,「キルヒホッフの第2法則」を指すことが多い.
※※ 本質的には「電位の一意性」を表す.
《例》%未完
抵抗 $R_1$ と $R_2$ が直列に接続されている場合,電圧 $V_0$ は,
\[V_0 = R_1 I + R_2 I\]
《例》
抵抗 $R_1$ と $R_2$ が並列に接続されている場合,各ループの電流 $I_1$ および $I_2$とすると,
\[R_1 I_1 = R_2 I_2 = V_0\]
《例》
回路図
キルヒホッフ則より,
\[\begin{align*} V_0 &= 2R(I – i) + R I\\ &= Ri + RI \end{align*}\]
\[\therefore \begin{cases} 3I – 2i = \frac{V_0}{R} \\ I + i = \frac{V_0}{R} \end{cases}\]
\[\therefore i = \frac{2V_0}{5R}, \quad I = \frac{3V_0}{5R}\]
◆ 電荷保存則
孤立系の電荷の総量は保存する.この事実を電荷保存則という.簡単に言えば,他の部分とつながっておらず,電荷のやりとりがない部分の内部で電荷が移動する場合,その総量は変わらない,ということである.
《例》
回路図
キルヒホッフ則より,
\[V_0 = \frac{q_0}{C}\]
したがって,
\[q_0 = CV_0\]
電荷保存則より,
\[x_1 + y_1 = q_0 + 0\]
キルヒホッフ則により,
\[\begin{split} &\frac{x_1}{C} = \frac{y_1}{2C}\\ &\therefore x_1 = \frac{1}{3} CV_0, \quad y_1 = \frac{2}{3} CV_0\end{split}\]
◆ 過渡現象
電池,抵抗,コンデンサからなる回路では,充分に時間が経過すると,回路は定常な状態に達する.定常状態において,コンデンサの電荷は一定となり,流入・流出する電流がゼロとなる.このことは常識にしておく.
《例》
回路図
キルヒホッフ則より,
\[V_0 = \frac{Q}{C} + RI \quad – \text{①}\]
また,
\[I = \frac{dQ}{dt} \quad – \text{②}\]
$t = 0$ の直後には,
\[Q = 0 \quad \Rightarrow \quad I = \frac{V_0}{R}\]
充電に時間が経つと回路は定常となり,
\[I = 0 \quad \Rightarrow \quad Q = CV_0\]
①,②より,
\[\begin{split} &I = \frac{1}{R} \left( V_0 – \frac{Q}{C} \right)\\ &\therefore \frac{dQ}{dt} = -\frac{1}{RC} \left( Q – CV_0 \right)\\ &\Rightarrow Q – CV_0 = A e^{-t/(RC)} \end{split}\]
$Q(0) = 0$ より$A = -CV_0$となり,
\[Q = CV_0 \left( 1 – e^{-t/(RC)} \right), \quad I = \frac{V_0}{R} e^{-t/(RC)}\]
充電電荷 ( Q ) と電流 ( I ) のグラフ
◆ コンデンサの内部構造
面積${S}$,間隔${d}$の平行平板コンデンサが電荷${\pm Q}$を持つとき,極板間の電場は,${+Q}$から${-Q}$の向きへ,$E = \dfrac{Q}{\varepsilon_0 S}$である.また,極板間の電位差・電圧を${V}$とすると,${V = Ed}$より,
$$ V = \dfrac{Q}{\varepsilon_0 S}d \qquad\therefore~ Q = \varepsilon_0\frac{S}{d}V~. $$
よって,容量は次式となる:
$$C = \varepsilon_0\frac{S}{d}~.$$
整理すると,以下のようになるが,この流れを自力で説明できるようにしておく.
$$ E = \frac{Q}{\varepsilon_0 S} =\frac{V}{d} \quad\Longrightarrow\quad Q = \underbrace{\varepsilon_0\frac{S}{d}}_{=C}\times V~. $$
《例》
3枚極板の問題
\[-Q_0, \quad Q_0, \quad -Q_0\]
電場の関係より、次の連立方程式が得られる:
\[\begin{cases} -x_2 + y_2 = 0\\ \frac{y_2}{\epsilon_0 S} \cdot 2d + \frac{x_2}{\epsilon_0 S} \cdot d = V_0\end{cases}\]
\[\therefore x_2 = y_2 = \frac{\epsilon_0 S V_0}{3d}\]
\[\begin{cases} -x_3 + y_3 = Q_0 \\ \frac{y_3}{\epsilon_0 S} \cdot 2d + \frac{x_3}{\epsilon_0 S} \cdot d = 0\end{cases}\]
\[\therefore x_3 = -\frac{2}{3}Q_0, \quad y_3 = \frac{1}{3}Q_0 \]
◆ アースについて
アース・接地とは,回路の一部を地面と接続することを意味する.
ここで,地面は無限に大きい導体と見なすことができ,その帯電は無視できる.特に断りがないときには,アースを電位の基準とすることが慣例となっている.
§ 回路の諸々
合成抵抗や誘電体などの細々したテーマを扱います.なお,「回路の対称性」については,正しく解説できる教師が少ないため,講師の腕の見せ所になります.
◆ 非線型抵抗
非線型抵抗とは,オームの法則に従わない抵抗のこと.
\[\text{連立} \begin{cases} \text{キルヒホッフ則} \\ \text{特性曲線}\end{cases}\]
《解法Fr例題3-4》
◆ 合成抵抗の公式
2つの抵抗(抵抗値${R_1}$,${R_2}$)を直列,または並列に接続したときの合成抵抗は,次のようになる:
$$R_\text{直列} = R_1+R_2~,\quad\frac{1}{R_\text{並列}} = \frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}~.$$
※ 直列でも並列でもない場合には,当然ながらこの公式は使えない.
◆ 合成容量の公式
2つのコンデンサー(静電容量${C_1}$,${C_2}$)を直列,または並列に接続したときの合成容量は,次のようになる:
$$C_\text{並列} = C_1+C_2~,\quad\frac{1}{C_\text{直列}} = \frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}~.$$
直列合成容量の公式は,接続された2つの極板の電荷の総量が0のときにしか使えないことに注意.
◆ 導体の静電誘導
導体内部に電場があると,キャリア(金属であれば自由電子)が移動して,元の電場を打ち消すような新たな電場を作る.
その結果,定常状態では導体内部に電場はない(導体に電源のように強制的に電流を流す仕組みが働く場合は別).そのとき,帯電は導体表面にのみ生じ,導体内部は至る所で等電位である.
◆ 誘電体の誘電分極
導体でない物体を誘電体・不導体という.比誘電率${\varepsilon_\mathrm{r}}$(誘電率${\varepsilon = \varepsilon_\mathrm{r}\varepsilon_0}$の誘電体の内部の電場は,誘電分極した分子の作る電場の影響により,外部の電場の${\frac{1}{\varepsilon_\mathrm{r}}}$倍となる.
また,コンデンサーの極板間を誘電体で満たすと,静電容量が元の${\varepsilon_\mathrm{r}}$倍になる.
《解法Fr例題4-2》
§ 回路のエネルギー
回路のエネルギーについて扱います.多くの参考書や塾・予備校のカリキュラムでは,回路の状態の決定とエネルギーの議論がごちゃ混ぜになっており,受験生の混乱を助長しています.回路の状態の決定ができるようになった後に回路のエネルギーについて学ぶとスムーズであることを実感してもらえるでしょう.
まずは,各回路素子(電池,抵抗,コンデンサ)のエネルギー的な役割を学び,それらの間のエネルギー収支関係を数式と言語の両面から理解できるようにしていきます.
応用的な問題として,コンデンサの極板間引力や誘電体が受ける力をエネルギー収支から逆算するものがあります.回路のエネルギー収支を考える際には,力→仕事→エネルギー収支という力学のスタンダードな思考過程とは異なり,エネルギー収支から仕事や力を逆算するタイプの思考過程をたどることが多くなることに注意が必要です.ここを意識して学習しないと,力学の学力低下を招くことになります.
◆ 各素子の役割
回路のエネルギー収支において,各素子の役割は次の通りである.
- 電池 ⇒ 仕事をして,回路にエネルギーを供給する.
- 抵抗 ⇒ ジュール熱を生じ,回路のエネルギーを消費する.
- コンデンサ ⇒ 静電エネルギーを蓄える.
◆ 電池の仕事
起電力${V_0}$の電池を(負極側から正極側へ)電荷${\varDelta Q}$が通過したときを考えよう.この際,通過した電荷の位置エネルギーが$\varDelta Q\cdot V_0}$だけ増えたことから逆算するとこにより,電池がした仕事は次式のように書ける:
$$W_\text{B} = \varDelta Q\cdot V_0~.$$
また,(負極側から正極側へ)流れる電流を${I}$とすれば,電池の仕事率(供給電力)は,次式になる:
$$P_\text{B} = IV_0~.$$
《例》
$V_0 = 5 \, \text{V}$,$\varDelta Q = 6 \, \mu \text{C}$なら,
\[W_\mathrm{B} = \varDelta Q \cdot V_0 = 30 \, \mu \text{J}\]
◆ 抵抗の消費電力
抵抗${R}$に電流${I}$が流れているときを考えよう.微小時間$\Delta t$の間に,$I\Delta t$の電荷が,$RI$だけ低電位の所へ移るので,$I\Delta t\cdot RI = RI^2\Delta t$だけのエネルギーが失われることになり,この分だけジュール熱が生じる.よって,単位時間あたりに生じるジュール熱(消費電力)は次式となる:
《例》
$R = 5 \, \Omega $,$I = 2 \, \text{A}$,$\varDelta t = 3 \, \text{s}$なら,
\[\begin{split} &P_\mathrm{J} = RI^2 = 5 \times (2)^2 = 20 \, \text{W}\\ &J = RI^2 \Delta t = 20 \times 3 = 60 \, \text{J} \end{split}\]
◆ コンデンサの静電エネルギー
容量${C}$のコンデンサーが電荷${\pm Q}$を持つとき,蓄えられている静電エネルギーは次式となる:
$$U_\mathrm{C}=\frac{1}{2}\frac{Q^2}{C}~.$$
※ 導出は「標準演習」内で行う.
《例》
$C = 5 \, \mu \text{F}$,$Q = 2 \, \mu \text{C}$なら,
\[\begin{align*} U_\mathrm{C} &=\frac{1}{2} \frac{Q^2}{C} = \frac{1}{2} \times \frac{(2 \, \mu \text{C})^2}{5 \, \mu \text{F}} &= 0.4 \, \mu \text{J}\end{align*}\]
《解放Fr例題6-1》
《解放Fr例題6-4》