【学習ガイド】『基幹*物理II -電磁気-』

入試物理における電磁気分野の位置付け

力学が理学部的に「物理学」の基本精神を学ぶ分野であると言えるのに対し,入試物理の電磁気分野は工学部的な姿勢を学ぶ分野と言えるかもしれません.電磁誘導ではある程度理論的なことも学ぶものの,力学における運動方程式に相当するような電磁場を決定する基本法則(マクスウェル方程式系)を学ぶわけではなく,入試では特に回路に関わる問題が重視されます.それゆえ,電磁気分野を学ぶ際にはある程度パズル的に楽しんで学習することもできる分野だと言えます.

電磁気分野の学習内容と学習の進め方

[電気分野]
電気分野の入試問題は大雑把に次のように分類できます.

Ⅰでは,静電気力(クーロン力)について新しく学び,力学のときと同様に,力を図示して運動方程式を立てたり,エネルギー保存則を立ててゆくことになります.この部分に特有の学習項目は,静電気力に関わる公式・用語のみであることに留意してください.

Ⅱでは,回路素子である電池,抵抗,コンデンサの性質を押さえた上で,電荷保存則とキルヒホッフ法則を立てられるようになれば方針に困ることはなくなります.これは回路がいくら複雑化しても変わりません.パズルを解くつもりで,似たような問題をくり返し訓練することで,得点源にしやすい所になります.

Ⅲに関して,エネルギー収支の考え方自体は,力学でも学ぶものですが,ここでは,エネルギーから仕事や力を逆算する考え方が多くなります.力学の訓練を済ませた上で,ひととおりの典型問題に取り組むのがよいでしょう.

電気分野の学習時期としては,受験学年の夏までに標準的な問題演習まで済ませておきたいところです.

[磁気分野]
磁気分野の入試問題は大雑把に次のように分類できます:

ⅠとⅢに関しては,電気分野がそれなりに出来ていれば,公式や知識が多少増えるだけで,基本的に困ることはありません.

Ⅱでは,電磁誘導特有の「誘導起電力の決定」と「エネルギーの変換」に関わる訓練が特に必要です.

学習時期としては,電気分野の基礎固めができていれば,秋からでも充分に間に合います(余力があればもっと早い時期でもちろん構わない).逆に言えば,電気分野を夏までにある程度固めておかないといけないということです.

電磁気を得意にする学習姿勢

電磁気分野を得意にするために,最も大事な精神姿勢は,はじめから「電気ってなんだかよく分からない」と言って学習を投げ出さないことです.電気に限らず,エネルギーであれ何であれ,それが何であるかということを最初からつかめるわけではありません.計算をくり返し,持っている性質に精通し,慣れ親しんでいくことで初めて概念把握ができるものなのです.学習の初期の段階では,「電気ってなに?」という疑問には一旦フタをしておきましょう.

また,電磁気分野が苦手になる最大の要因が用語の混乱にあります.公式・用語を丁寧に扱ってください,例えば,電場・電位・電圧・起電力・電流・電力といった用語の意味を正しく把握しなければ問題を解けるわけがありません.まずは,用語の意味を正しく把握することです.ただし、概念を把握せよ,ということでは勿論ありません.「電流」であれば,「導線断面を単位時間あたりに通過する電荷(電気量)」といった具合に,計算に結び付く形で用語を把握すべきということです.端的に言えば,物理量の定義を定量的に正確に知っておくということです.特に,電気の学び始めには,電場・電位の用語・公式が混乱してやる気をなくしている受験生が無数にいます.まずは,用語・公式をまとめた紙を作り,それを参照しながら基礎的な問題を解いていくのが良いでしょう(まとめはルーズリーフ1枚で済むず).

得点力最大化戦略[電磁気編]

なお,電磁気分野は標準レベルと難関レベルの問題の難易度に差が比較的つきにくい分野です.