【学習ガイド】『基幹*物理I -力学・熱力学-』

入試物理における力学の位置付け

力学はどの大学でもほぼ必ず出題される上,物理の他の分野でもその知識・思考法を応用するため,重要度が最も高い分野です.力学の思想は,すなわち物理学の基本思想になりますから,力学の学習を通じて物理的な考え方を身につけることが,他の分野を学ぶ際にも大きな助けになることでしょう.

一方で,高校物理の力学は,実は大学教養レベルの力学と大差がありません.もちろんいくつかの(それなりに多くの)項目が抜いてはありますが,力学の考え方・思想そのものは大学と同じものを学ぶと考えてください.

それゆえ,習得に最も時間がかかるにも関わらず,物理の学習の一番はじめに取り組まなければならないところが,学習者にとってのハードルを高くしています.裏を返せば,物理は学びはじめが肝心で大変さを伴うのですが,それを乗り越えてさえしまえば,その先の学習はかなり進めやすくなります

力学の学習内容と学習の進め方

まず,根幹をなす単元(運動方程式,運動の時間追跡,力学的エネルギー保存則,2物体系の基本)に取り組み,熱力学や電磁気などの他の分野に進みながら,それらの範囲の演習を進めていきましょう.それ以外の単元は後から埋めていく形でよいでしょう.

力学を得意にする学習姿勢

まずはとにかく,物体に働く力を図示して運動方程式を立てられるようになることが大切です.それが不完全なままだと,その後の運動量・力積やエネルギー・仕事でのミスが減らなくもなってしまいます.はじめに,「運動方程式と束縛条件」に丁寧に取り組んでください.そして,力学の根幹をなす単元(運動方程式,運動の時間追跡,力学的エネルギー保存則,2物体系の基本)の基礎を学んでゆくことで,力学の考え方に親しんでゆくことができるでしょう.

力学を1周だけでマスターするのは不可能ですから,まずは,その後,他分野を学びつつ,再び力学を学び直すような姿勢が必要です.力学の学習を疎かにすることはできませんが,かといって力学を完璧にしてから他分野に進もうとすると学習計画が破綻するので注意しましょう.

得点力最大化戦略[力学編]

入試物理の中で力学が最も問題の幅が広く,試験場での「思考力」も問われます.ひととおり学び終わった段階で,知識・スキルを柔軟に引き出せるように,頭の中を整理する必要があります.

入試物理における熱力学の位置付け

力学では扱えない物理量である温度と熱について学ぶ分野です.入試では最も得点源にしやすい分野ですが,必ず出題されるわけではないのが残念なところです.

熱力学の学習内容と学習の進め方

熱力学分野の主題は,理想気体の熱現象を通じ,温度と熱について学ぶことです.入試問題はざっくり次のように分類できます.

とにかくⅠの基本思考をマスターすることが大切です.それは,すなわち,理想気体の状態方程式と熱力学第1法則を正しく運用できるようになるということです.基本思考を理解することで,例外処理の考え方が「例外的」であることが浮き彫りになり,入試問題の解法で迷うことがなくなります.本来,高校物理の熱力学では扱える手法が非常に少ないものの,解法が整理できず,ごちゃごちゃしていると感じている受験生も多いようです. 一気に解法を完全に整理することで,スッキリ理解できるようになります.その後,モル比熱や熱効率などの細かな知識を仕入れていきましょう.
Ⅱの気体分子運動論は,考え方自体は難しい所もありますが,直方体容器と球形容器の2パターンしか出題されないので,それだけ押さえておけばよいでしょう(余力が無ければ後回しでも).
Ⅲのタイプの問題は練習あるのみ,です.

力学の根幹の学習が終わる頃に熱力学を学び始めるのが良いでしょう.
前期の間にIをマスターし,細かい知識やII,IIIについては後回しでも良いでしょう.