【共テ物理】’23本試*分析と解説

#2023年 #共通テスト #本試験 #物理 #くにごろう #JUKEN7

◆問題一覧

第1問


第2問


第3問


第4問


◆分析と解説

第1問

[問1]③

《要点》
2つの支点で支えられた剛体棒のつりあいの問題ではあるが,てこの原理の「常識」で解いてしまう受験生も多そう.体重計は押される力(すなわち垂直抗力の大きさ)を測り,質量の単位で表示していることに注意.

《解説》
板と各体重計との間の垂直抗力の大きさを$N_\mathrm{a}$,$N_\mathrm{b}$,板の長さを$L$とし,$m=60\,\mathrm{kg}$とする. 板と人を一体と見て,力のつりあい,および力のモーメントのつりあいより, \[ \begin{cases} N_\mathrm{a}+N_\mathrm{b}=mg~,\\ -N_a \cdot \dfrac{2}{3} L+N_b \cdot \dfrac{1}{3} L=0 \end{cases} \qquad\therefore~ N_\mathrm{a}=\frac{1}{3}mg~,\quad N_\mathrm{b}=\frac{2}{3}mg~. \] よって,各体重計の指示値は, \[ \frac{N_\mathrm{a}}{g}=20\,\mathrm{kg}~,\quad \frac{N_\mathrm{b}}{g}=40\,\mathrm{kg}~. \]

[問2]③

#定性評価

《要点》
$P$-$V$グラフの与えられたサイクル(断熱膨張→定積加熱→等温圧縮)での,各量の符号の議論.

《解説》
サイクルを1周すると,温度が(途中では変化するが)元に戻るため,気体の内部エネルギーも(途中では変化するが)元に戻る.

1サイクルで気体が外部へする仕事を$W$,吸熱量を$Q$とすれば,熱力学第1法則より$Q=W$である.A→Bで正の仕事をし,C→Aで負の仕事をするが,負の仕事の方が大きさが大きいため$W<0$である(つまり,された仕事は正).よって,$Q>0$である.

[問3]④ ⑤

#法則理解

《要点》
台と台上をすべる物体からなる形の運動量・エネルギーの評価.

《解説》
固定されたそり上をブロックが動摩擦力を受けて減速しながら滑る場合,ブロックの運動量も力学的エネルギーも保存する.

そりが自由に動ける場合は,外力がないため,系の全運動量は保存する.また,動摩擦力の仕事は(そりに対して正,ブロックに対して負となるが)合計で負になるから,系の力学的エネルギーは減少する.

[問4]④

#定性評価

《要点》
一様磁場中の荷電粒子の等速円運動に関する基本問題.電荷と質量のよる軌道の変化を評価する.

《解説》
ローレンツ力の向きをフレミングの左手則で判定すれば,正電荷が反時計回りに,負電荷が時計回りに回転することが分かる.

粒子の質量を$m$,電荷を$q$,速さを$v$とし,磁束密度の大きさを$B$とすれば,軌道半径は$r=\dfrac{m V}{|q|B}$である(運動方程式より).よって,質量が大きいほど軌道半径が大きくなることが分かる.

※ 直感的に「質量が大きいほど曲がりづらい」と判断することもできるが,式を書いてしまえば安心.

[問5]⑤

《要点》
光電効果の基本問題.

《解説》
$W$は仕事関数に対応し,$K_0=h \nu-W$である.$\nu=\nu_0$で$K_0=0$となることから,$h=\dfrac{W}{\nu_0}$である.

第2問

《要点》
空気抵抗を受けた落下運動.抵抗力が速度に比例する場合だけでなく,2乗に比例する場合も議論する.

[問1]⑥

#定性評価

《要点》
定性評価だが,運動方程式を書いて判断する.

《解説》
下向き正で加速度を$a$とすれば,運動方程式より$ma=mg-R$である.抵抗力は速度と逆向きで,加速につれ大きくなる.すると,加速度は小さくなってゆきやがてゼロに漸近する(重力と抵抗力がつりあってしまう).そのときの速度が終端速度$v_\mathrm{f}=\frac{mg}{k}$である.

[問2]①⑤⓪

#データ読取 #表 #実験

《要点》
与えられた表から速度を計算する.

《解説》
$0.13\,\mathrm{s}$ごとに$20\,\mathrm{cm}$変位するようになることが分かる.よって, \[ v_\mathrm{f}=\frac{0.20\,\mathrm{m}}{0.13\,\mathrm{s}} =1.53 \cdots\,\mathrm{m/s}~. \]

[問3]②

#データ読取 #実験

《要点》
仮説から言えることと実験データの矛盾点を探る.

《解説》
アルミカップ1枚の質量を$m_0$とすれば,$m=nm_0$である.予測に基づくと$v_\mathrm{f}=n \frac{m_0 g}{k}$であり,$v_\mathrm{f}$と$n$の関係は「比例」となる.よって,実験結果から比例関係(グラフが原点を通る直線になる)と言えない理由を選べばよい.

[問4]④⑧

《要点》
グラフが原点を通る直線になる(比例)ための軸の取り方を問う.式を具体的に書き下せば分かる.

《解説》
$v_\mathrm{f}=\sqrt{\dfrac{m g}{k^{\prime}}}=\sqrt{n \dfrac{m_0 g}{k^{\prime}}}$より,$v_\mathrm{f}$は$\sqrt{n}$に比例する.$v_\mathrm{f}{}^2$が$n$に比例するといってもよい.

[問5]⑨

※ 空気抵抗の下での運動にかかわる出題は,’22追試に第2問に続いて.速度の1乗と2乗に比例する空気抵抗力を共に議論する有名問題としては,’18京都大がある.

第3問

《要点》
円運動する物体の関わるドップラー効果.音源が動く場合と観測者が動く場合の両方が登場.

[問1]⑤

《解説》
向心力とは,円運動する物体に働く力の中心方向成分のこと.本問では働いている具体的な力が明示されていないので,$m\dfrac{v^2}{r}$と答える.

円運動において,向心力と速度は常に直交するから,向心力は仕事をしない.

[問2]⑥

《要点》
斜め方向のドップラー効果では,速度の「視線成分」のみがドップラー効果に寄与する.問題文に書かれているが,常識である.

《解説》
速度の視線成分(音源と観測者を結ぶ方向の成分)がゼロになる地点を選ぶ.

[問3]⑥

《解説》
音源は,点Aでは速さ$v$で観測者に近づき,点Bでは速さ$v$で観測者から遠ざかると見なせるから, \[ f_\mathrm{A} = \frac{V}{V-v}f~,\quad f_\mathrm{B}=\frac{V}{V+v}f~. \] 辺々割って$f$を消去して整理すれば,\[ v = \frac{f_\mathrm{A}-f_\mathrm{B}}{f_\mathrm{A}+f_\mathrm{B}}V~. \]

[問4]①

#定性評価

《解説》
今度は観測者が,点Aでは速さ$v$で音源に近づき(観測振動数は上がる),点Bでは速さ$v$で音源から遠ざかると見なせる(観測振動数は下がる).それ以外の地点では,速度の視線成分の大きさは$v$より小さく,ドップラー効果による振動数変化の大きさも小さい.

[問5]④

#正誤選択

《解説》
(a) ドップラー効果によって「媒質に対する音速」が変わることはない.
(b) Oの方向への速度の視線成分は常にゼロである.
(c) この状況では,音源は静止しているので,「音源から見た音速」は「媒質に対する音速」と同義.
(d) この状況では,音源は静止しているので,波長の変化はない.

※ ドップラー効果の出題は,’21本試(小問),’22追試に続いて.

第4問

《要点》
コンデンサの放電過程.放電時,キルヒホッフ則により$\dfrac{Q}{C}=RI$が常に成り立つ,

[問1]⑧

《要点》
平行平板コンデンサの基本.

電場と電位の関係より$E=\frac{V}{d}$であり,ガウスの法則より$E=\dfrac{4 \pi k_0 Q}{S}$であるから, \[ Q =\underbrace{\frac{1}{4 \pi k_0} \frac{S}{d}}_{=C} \times V~. \]

※ 真空の誘電率$\varepsilon_0$を用いて,$k_0=\dfrac{1}{4 \pi \varepsilon_0}$であることも常識.

[問2]⑦

《要点》
放電時の電流の時間変化のグラフから抵抗値を求める.初期値に注目することが判断できるかどうか.

《解説》
充電電圧は$V_0=5.0\,\mathrm{V}$であり,コンデンサの電荷の初期値は$Q_0=CV_0$である.また,放電開始直後の電流をグラフから読み取ると$I_0=100\,\mathrm{mA}=0.10\,\mathrm{A}$である.よって, \[ \frac{Q_0}{C} = RI_0 \qquad\therefore~ R = \frac{V_0}{I_0} = 50\,\Omega~. \]

[問3]③ ⑧

《要点》
放電の総量,すなわち初期の電荷が分かることから,容量を求める(初期の電圧は既知).

《解説》
$10\,\mathrm{s} \times 10\,\mathrm{mA}=100\,\mathrm{mC}=0.1\mathrm{C}~.$

$Q_0=CV_0$の値を$4.5\,\mathrm{C}$と近似することにより, \[ C \simeq \frac{Q_0}{V_0} = 0.90\,\mathrm{F} \]

[問4]④

#大雑把に捉える

《要点》
「半減期」の何倍の時間で,電流が1/1000になるか.

《解説》
電流が$\dfrac{1}{1000} \simeq \dfrac{1}{2^{10}}$となる時間は,「半減期」である$35\,\mathrm{s}$の10倍程度である.

※ 問題文から判断できるともいえるが,指数関数的な変化についての理解がないと苦しいだろう.
※ $\dfrac{1}{1000}\simeq\frac{1}{2^{10}}$という大雑把な評価ができるか.

[問5]⑤

#誤差評価

《解説》
$t=t_1$におけるキルヒホッフ則を考えて, \[ \frac{Q_0-Q_1}{C}=R \cdot \frac{I_0}{2}~. \] これと$\dfrac{Q_0}{C}=R I_0$を併せて, \[ Q_0 = 2 Q_1~. \]

$C=\dfrac{Q_0}{V_0}$であるが,最初の方法では$Q_0$の値として実際より少ない値を使っていたため,$C$が正しい値より小さくなってしまっていたと考えられる.

※ ’21本試第2問Aにおいて,コンデンサの過渡現象が題材とされたが,はじめと充分後のことしか聞かれない(教育的配慮の乏しい)問題であった.その代償のような出題であったか…😅