【共テ物理】2021年度第1日程 – 分析と解説

#共通テスト #物理 #2021年 #第1日程 #くにごろう #JUKEN7

平均点:62.36

◆ 第1問 – 小問集合

[問1]④**

台車とともに動く座標系に移り,重力と慣性力(架空の力)の合力を見かけの重力とみなす.見かけの重力の向きは左下向きとなり,見かけの水平面はそれと直交する.

[問2]⑤**

#何を系と見るか

荷物と板,人と板の間に働く力の情報が必要ないので,板と荷物と人を一体と見てしまえばよい.持ち上がる臨界状況においては,板と床の間の垂直抗力がゼロとなる.

全体の質量を$M_\mathrm{T}=120\,\mathrm{kg}$と記し,ロープを弾く力を$F$とする.臨界状況での力のつりあいより, \[ 0=3 F-M_\mathrm{T} g \quad \therefore F=\frac{1}{3} M_\mathrm{T}g~. \]

[問3]②*

電位分布から電場の強さを見積もる.各極板間の電位差(電圧)は$V$であるから,極板間隔を$d$として,電場の強さは$E=\dfrac{V}{d}$である.つまり,間隔が狭いほど電場は強い.

[問4]①

#定性評価

音源が動くドップラー効果とうなりについて定性的に扱う.不安があれば,定量計算してしまってもよい.

直接音は,音源が近づいてくるので,振動数が上がっている.反射波は,音源が壁に対して遠ざかっているので,振動数が下がっている.うなりの振動数は,それらの振動数の差である.音源の速さを速くすると,振動数の上昇幅・下降幅がいずれも大きくなるので,うなりの振動数も大きくなる.

[問5]②*

#定性評価

理想気体の等温変化と断熱変化を比較する.圧力の決定についても問われる.

ピストンのつりあいから,圧力は下がる.また,断熱変化の方がグラフが急勾配であり,同じ圧力に達したとき,断熱の方が体積変化は小さい.

◆ 第2問A – 直流回路

電池,複数の抵抗と1つのコンデンサからなる回路.スイッチ切替の直後と充分経過後のことのみを問う.各状況でのキルヒホッフ則を考えてしまえば速い.エネルギー収支については問われない.

[問1]③ / ③⓪①**

スイッチを閉じた直後の電流を求めるだけでなく,等価回路を選択する.

$E=6.0\,\mathrm{V}$,$r=10\,\Omega$,$C=0.10\.\mathrm{F}$と記す.

はじめ,コンデンサは帯電しておらず電位差はゼロである.その意味で,等価回路はコンデンサを導線で置き換えたものとなる.このとき,点Qを流れる電流を$i$とすれば,$2r$の抵抗の電流は$\dfrac{i}{2}$である(電位差が$r$の抵抗と等しいから).すると,$ri+ri=E$より,$i=\dfrac{E}{2r}$となる.

※ 「等価回路」は,電位・電流の分布が等しくなる回路のことであるが,単に「同じ回路」を選べと受験生に指示することは,教育的配慮に欠けるのではないか.
※ 点Pの電流を問うと,「合成抵抗の公式」を用いて終わってしまうから,点Qの電流を問うたのはよかった.
※ 「対称性」を利用して考えてもよい.

[問2]④* / ②**

充分経過後の電流と電荷を求める.このとき,コンデンサへの電流が止むことは明示されている(が常識である).

上段・中段とも$I=\dfrac{E}{3r}$の電流が流れている.よって,点Pを流れる電流は$2I=\dfrac{2E}{3r}$である.また,コンデンサの電位差は$2rI-rI=\dfrac{E}{3}$であるから,電荷は$\dfrac{1}{3}CE$である.

[問3]④⓪①**

抵抗を変えて,スイッチを再度入れたところ,電流が変化しなかったことから,抵抗値を求める.「その後,点Pを流れる電流はスイッチを入れた直後の値を保持した」とあるが,これは,電流が変化せず一定であることを意味し,それはこの設定ではコンデンサへの電流がゼロのままであることを指す(これをロジカルに把握するには一定以上の学力が必要であろう).

コンデンサの両端が等電位になるため,$R=2\cdot 2r=4R$とすればよい.

※ いわゆる「ホイートストンブリッジ」と考えることもできる.

◆ 第2問B – 静磁場中を動く2本の導体棒

静磁場中を2本の導体棒が動くタイプの電磁誘導の問題.エネルギー収支は問われない.「vBl公式」とキルヒホッフの法則,そして運動方程式が基本.

※ 難関大頻出設定が出題されたことで,共テ物理はセンター物理よりも2次よりになったという印象が強くなった.

[問4]②**

はじめの電流を求める.

導体棒aにはPの向きに$v_0Bd$の誘導起電力が生じる.回路の抵抗値の合計は$R=rd\times 2$であり,誘導電流は$\dfrac{v_0Bd}{R}$となる.

[問5]③*

この設定においては,2本の導体棒に働く力が互いに同じ大きさ逆向きになることを論じる.

電流が磁場から受ける力の公式を考えるだけ.

[問6]③**

充分経過後に電流がゼロに近づくこと,また,全運動量が保存することの理解を問う.

充分経過後,電流がゼロとなるため,2本の導体棒の速度は等しくなる(起電力が相殺する).その速度を$v_\mathrm{f}$とすれば,運動量の和が保存することより, \[ 2mv_\mathrm{f} = mv_0~. \]

※ 充分経過後にどうなるかロジカルに議論するのはなかなか難しい(ジュール熱が無限に出てはおかしいと,背理法的な議論か).
※ 導体棒に働く力は「内力」ではないが,内力かのように働くために全運動量が保存する.このことについてのヒントが問5だったのであろう.
※ 系の力学的エネルギーの減少分は,抵抗で生じたジュール熱の総量に等しい.

◆ 第3問A – 光の屈折

ダイヤモンドがキラキラと輝く理由を考えようと言われるが,要は光の分散と全反射の問題.

※ 物理内容以外を捨象する能力は一体どのように磨かれるのか…?

[問1]①*

光の屈折と分散に関する知識問題.基本的

[問2]②

屈折の法則を2か所で立てる(図形的関係式は問われない).臨界角,全反射などの用語はもちろん知っていないといけない.基本的.

DE面での屈折の法則は, \[ 1 \cdot \sin i=n \sin r~. \] また,AC面での入射角が臨界角に達した状況を考えて, \[ n \sin \theta_\mathrm{c}=1 \cdot \sin 90^{\circ}~. \]

[問3]④** / ①*

#データ処理 #定性評価

2つの面へ入射する際の角度は,はじめの入射角の関数である.そのグラフが与えられ,情報を読み取って答える.

与えられたデータから,ダイヤモンドでは入射角がある程度小さいときに面ACで全反射が起こることが分かる.一方,ガラスでは面ACで全反射が起こることはない.

データによると,ダイヤモンドはガラスより臨界角が小さい.すなわち,屈折率が大きい.そのため内部で光が全反射しやすい.

◆ 第3問B – ミクロな世界での衝突

※ 第3問AとBはいずれも「輝き」がテーマ.ただし,全く別分野の知識を問うため,つながりを意識する必要はない.

[問4]②*

電圧による電子の加速の「常識」を問う.

[問5]①**

#現象理解

電子と水銀原子の衝突において,運動量保存則が成立することへの認識を問う.

[問6]⑥**

#現象理解

電子と水銀原子の衝突において,原子内部のエネルギーも含めてエネルギー保存則が成立することへの認識を問う.

※ ミクロな世界での衝突において,運動量とエネルギーが保存することは「原理」であるから,受験生にとっては「知識」を問われていることになる.

◆ 第4問 – 投射と合体・衝突

[問1]④**

#定性評価

放物運動の軌跡が,初期条件によってどのように変化するかを問う.定量計算するのが基本であるが,極端な状況から推測することもできる.

速度の水平成分は変わらないので, \[ v_\mathrm{A} \cos \theta_\mathrm{A}=v_\mathrm{B} \cos \theta_\mathrm{B}~. \] $v_\mathrm{B}>v_\mathrm{A}$は明らかであるから(力学的エネルギー保存則などにより), $\cos \theta_\mathrm{B}<\cos \theta_\mathrm{A}$となり, $\theta_\mathrm{B}>\theta_\mathrm{A}$が言える.

※ AとBの高度差が極端に大きい状況では,$\theta_\mathrm{B}$は$90^\circ$に近づいてゆくだろう.

[問2]③*

#現象理解

「合体」時の運動量保存則(水平成分のみ)を用いる.

\[ (M+m) V=m v_B \cos \theta_\mathrm{B}~. \]

※ なんと本試験では,運動量保存則が3箇所に登場した.

[問3]①**

#現象理解

衝突時のエネルギー損失についての理解を問う.

一般に,衝突により系の力学的エネルギーは減少する.

[問4]④*

#現象理解

なめらかな固定面との斜め衝突について.

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