【物理】「典型入試演習」活用ガイド

本ページでは,『典型入試演習』の各問題についての説明と受講生向けの活用ガイドについて記述します.

◆ 「典型入試演習」のコンセプト

「典型入試演習」は,「基幹物理シリーズ」の各講座に付属している演習講座です.

良問演習で基礎力を得点力へ

実践的なアウトプット練習を通じ,基礎力を得点力へ結びつけます.

  • 標準レベルの過去問から学習効果の高い良問を精選.
  • 得点力に直結する典型的な問題を優先.

※ 6月下旬に「典型入試演習」のテキストを改定しました.
※ 力学・熱力学・電磁気分野では,更に演習量を増やしたい方向けの「良問の嵐」も付属します(「典型入試演習」の裏バージョンの位置付け).
※  「良問の嵐」は製本テキスト未収録です.

◆ 効果的な受講法

予習について

  • 1題につき20~30分程度を目安に解いてみましょう.
  • 分からない問題は無理に解かない方がよいです.
  • 必要に応じて,自分のノートも見比べてみましょう.

講義について

  • テキストの解説を読んで理解できた問題の解説講義は無理に見る必要はありません.
  • 気になる部分以外は倍速再生で軽く確認する,というのもアリです.
  • 演習講義の場合,板書をただ写すのではなく,解説を参考に自分で解き直してみる姿勢が重要です.

復習について

  • 自力で解けなかった問題については,数日後に再度解き直しましょう.
  • その後,ある程度時間を置いてから自力で解ければ合格です.
  • 自力で解けるようになった問題をくり返し何度も解く必要はありません.

取り組むタイミング

  • 基礎から学びはじめている方:
    基礎学習がある程度進んだ段階で,並行して「典型入試演習」にも取り組みましょう.
  • ある程度基礎に自信がある方:
    まず「典型入試演習」の取り組み,弱い部分を見つけ,基礎学習に戻るのが効率的です.

※ 分野ごと単元ごとに判断してください.

その他注意点

  • 演習であれ,きちんとノートを作成しましょう.はじめは丁寧に書く練習で思考が整理され,計算力が向上します.
  • 特に,計算用紙などに行うのは止めましょう.
  • 自分が間違えたポイントをまとめておいて後で見返せるようにするのがオススメです(スマホで写真を撮りアルバム化するのもよいでしょう).

◆ 問題一覧

解説講義のない問題について

熱力学2, 7 / 波動10:新規追加・変更問題につき講義準備中です.
波動12~18 / 原子物理1~5:標準演習と大差のない問題のため,解説講義作成予定はありません.

ご了承くださいませ.受講者の方は,ご質問があればCommuneまで!

力学分野

1. 07佐賀:斜面への投射

  • 運動方程式から運動を時間追跡することで放物運動になることが分かる.
  • 斜面に沿った方向と斜面に垂直な方向に分解すると計算しやすい.
  • 異なる座標軸を用いても得られる結果が変わらないことを確認しておきたい.
  • 計算では,三角関数の公式を利用する.

2. オリジナル:板上での摩擦

  • 摩擦力の扱いの基本を確認する.
  • (4) 各物体の運動は,等加速度運動の組みあわせとなるため,(数式による愚直な計算より)v-t グラフを上手く利用したい.
  • (5) エネルギー損失は直接的に計算してもよいし,エネルギー収支から逆算することもできる.

3. 90弘前:F-t図

  • 加速度が時刻の1 次関数となる運動.
  • 素朴に時間追跡可能であるが,指示に従って力積を定義通りに求め,運動量と力積の関係を使っていく.
  • (1) 「質量を求める」ということに惑わされず,摩擦の基本通りに考えることが大事.

4. 99岐阜:空気抵抗

  • 指数関数で表される運動は,入試では関数形の決定まで問われないことが多い.
  • 本問では,はじめとおわりの状態だけを問いつつ,データ処理(グラフの読み取り)が絡められている.

5. オリジナル:ゴムひも

  • 外力を取り去った後の運動は,等加速度運動と単振動の組みあわせであり,運動方程式から時間追跡する方法と力学的エネルギー保存則を用いる方法の両方が使える.
  • (3)(4) 時間が問われないため,力学的エネルギー保存則を用いれば充分.
  • (5) 時間追跡が必須.
  • (2) 仕事は,定義通りの計算でも,エネルギー収支からの逆算でもよい.両方確認しておく.

6. オリジナル:摩擦下のばね振り子

  • 摩擦力について,静止摩擦,左にすべるときの動摩擦,右にすべるときの動摩擦を正しく区別して扱う.
  • 運動は単振動の組みあわせゆえ,時間追跡もエネルギー収支の考察も可能.両者を比較検討せよ.

7. オリジナル:クーロン力

  • 「電気分野」の問題と捉えず,「クーロン力の現れる力学」の問題と捉える.
  • 「点電荷の間に働くクーロン力」が未習の者は,本問は後回しにせよ.

8. オリジナル:円錐振り子の衝突

  • 等速円運動と衝突について,それぞれの定石通りに.

※ 元ネタがあったはずですが,出典不明になってしまいました.ご存じの方いらしたらご教示ください.

9. オリジナル:円運動からの放物運動

  • 非等速円運動の定石.
  • 放物運動の愚直な計算.

※ 元ネタがあったはずですが,出典不明になってしまいました.ご存じの方いらしたらご教示ください.

10. 95東京農工:ビリヤード

  • 衝突に関する諸々を確認する.

11. 05東北:可動台

  • 垂直抗力を介して相互作用する可動台と小物体の2 体問題は,定番中の定番ではある.
  • 前半:個々の運動方程式と束縛条件を連立して解く.
  • 後半:複数物体系の問題として扱う.

12. 07筑波:荷電粒子検出器

  • これも「電磁気分野」の問題ではなく,「ローレンツ力の下での力学」の問題と捉えたい.
  • 「ローレンツ力」が未習の者は,後回しにせよ.

13. 16名古屋工業:人工衛星

  • 万有引力の下での円軌道・楕円軌道の定石を確認する.
  • 楕円軌道の周期は,ケプラーの第3法則で求める.

14. 14奈良女子:電車内の振り子

  • 地面に固定した座標系(観測者B)で見ているのか,電車と共に動く座標系(観測者A)で見ているのか明確に意識する.
  • 慣性力(架空の力)の有無だけでなく,初期条件も異なることに注意.
  • 普段と異なり,力をベクトルのままで(成分分解せずに)扱うことにも注意.

15. 09千葉:回転リングに沿った運動

  • 小球がリングから受ける垂直抗力に関する設問を削除した(本来はコリオリ力の影響を考慮する必要があるため).
  • 回転する座標系を用いるため,遠心力が現れる.

16. 14筑波:壁に立てかけた棒

  • 剛体のつりあいの定石.

熱力学分野

1. オリジナル:理想気体の状態変化

  • 「熱力学の基本思考」の通り.

2. 23大分:3つの部屋

  • 応用的な設定であるが,基礎的な考え方に従って.

3. オリジナル:ばねつきピストン・混合

  • 熱力学の基本思考と例外処理(混合).

4. 94早稲田教育:気球

  • 状態方程式から気体の密度を求めることで,気球に働く浮力が分かる.

5. 16埼玉後期:液体と接する気体

  • やはり「熱力学の基本思考」通りに.
  • ただし,液面のつりあいとシリンダーのつりあいの両方を考える必要がある.
  • 何に注目しているのか明確に.

6. 15岡山:熱サイクル

  • 「熱力学の基本思考」通りに状態変化を追っていくのであるが,体積と温度が与えられているのでラク.

7. 12千葉:球形容器内の分子・フィルタ

  • 前半:気体分子運動論.球形用機でも考え方は直方体容器の場合と同様.
  • 後半:気体の混合.フィルタの性質を考慮しつつ基礎的な考え方を応用してゆく.

電磁気分野

1. 09関西学院:点電荷の作る電場

  • 電場・電位の定義.
  • 電場と電位の関係の確認.

2. 12関西学院:球殻コンデンサ

  • 拡がった電荷分布の作る電場は,電気力線を用いて求める.
  • コンデンサの容量の定義を確認する.

3. 03島根:可変抵抗を含む回路

  • 電池と抵抗のみからなる回路の状態は,キルヒホッフの法則だけで決定できる.
  • 電池には必ずしも電流が流れるとは限らない.

4. 05千葉 + 96関西:非線型抵抗を含む回路

  • 非線型抵抗を含む回路では,キルヒホッフ則と特性曲線を連立する.特に,特性曲線との交点を求める.

5. 10関西:電流計と電圧計

  • 電流計と電圧計を用いた抵抗値の測定についての問題.
  • 電流計・電圧計の取扱いについてここで学んでおく.

6. 17大阪府立:ダイオード&コンデンサ回路

  • 回路の状態は,電荷保存則とキルヒホッフ則で決定できる.
  • スイッチの切り替えごとに,回路図を図示し直すことが大事.
  • コッククロフト・ウォルトン回路と呼ばれる同様の回路の問題は,東京大[2011],近畿大[2016],名古屋工業大・後期[2017] などにも見られる.

7. 11福井:多少複雑な回路

  • 定常状態においてコンデンサへの電流が止むことは「常識」である.
  • コンデンサの電荷を未知量でおく方が,より基礎的な解法となるが,ここでは,電位差(電圧)を未知量とした解法を参考として示しておいた.

8. 97千葉:3枚の金属板①

  • コンデンサの内部構造を考えるタイプの問題ではあるが,回路の状態は,やはり電荷保存則とキルヒホッフ則で決定できる.

9. 07大阪府立:3枚の金属板②

  • これもコンデンサの内部構造を考える問題.
  • 誘電体の性質も押さえておく.

10. オリジナル:回路のエネルギー収支

  • 回路の過渡現象,およびエネルギー収支を扱う.
  • 電池のした仕事は,運んだ電荷のエネルギー変化に等しい.
  • コンデンサが蓄えた静電エネルギーは公式から求まる.
  • 抵抗で生じたジュール熱は,回路のエネルギー収支から逆算する.

11. オリジナル:金属板に働く力

  • 金属板が受ける力をエネルギー収支から逆算する問題.
  • 金属板が受ける力は極板間引力の合力としても理解できる.

12. 05上智:誘電体に働く力

  • コンデンサに挿入された誘電体が受ける力を,エネルギー収支から逆算する.
  • この力は直接的に求めることができない.

13. 18お茶女:サイクロトロン

  • サイクロトロンの典型問題.

14. 05愛媛:ホール効果

  • ホール効果の典型問題.

15. 92茨城:直線電流の作る磁場

  • 電流が作る磁場についての確認を行う.

16. 15慶應理工:磁場中を動く導体棒

  • 「静磁場中を動く導体棒」のタイプの電磁誘導の問題であり,誘導起電力は「$vB\ell$公式」から決定する.
  • ジュール熱は全体のエネルギー収支から求める.

17. 15名古屋工業:交流の発生と交流回路

  • 「静磁場中を動く導体棒」のタイプの電磁誘導ゆえ,誘導起電力は「$vB\ell$公式」から決定するのが基本ではある.
  • ここではファラデイ則からループ1 周あたりの起電力を求めてしまうのがラク.

18. 02京都府立医科:磁石の運動

  • 磁場が時間変化する(誘導電場が生じている)タイプの電磁誘導であるから,ファラデイ則から誘導起電力を求める.

19. 18信州:ベータトロン

  • ベータトロンの典型問題.

20. 大阪府立[2006]:変圧器を含む回路

  • コイルに生じる誘導起電力はファラデイ則から求める.
  • ジュール熱は,電流が変化するため,エネルギー収支から求めることになる.
  • コイルの電流は必ず連続に変化する.

波動分野

1. 07千葉:正弦波のグラフ

  • 先端のある正弦進行波が固定端反射して,定常波を生成する.
  • その様子を作図で捉える.

2. 20千葉:正弦波の式

  • 正弦進行波の反射と定常波の生成を波の式で扱う.
  • ドップラー効果も登場.

3. 14千葉:縦波

  • 縦波を(横波表示ではなく)見た目のままに扱う.

4. 20筑波:弦の固有振動

  • 弦の固有振動について総合的に扱う.
  • うなりも登場.

5. 19茨城:気柱の固有振動

  • 縦波の横波表示と気柱の固有振動・共鳴について.

6. 11千葉:ドップラー効果と風

  • 一直線上のドップラー効果を時間差に注目して扱う.
  • 風の影響を横向きに風が吹く場合も含めて扱う.

7. 09筑波:斜めドップラー効果

  • 斜め方向のドップラー効果.
  • 音波の伝達に要する時間も併せて考える設問は,初等的ありながら正答率が低いので注意.

8. 06筑波:光ファイバー

  • 全反射の知識から光ファイバーの仕組みを論じる.

9. 13筑波:虹

  • 屈折と分散の知識から虹の仕組みを論じる.
  • 分かりづらい議論があるため必ず解説講義を確認してください.

10. 14農工:屈折とレンズ

  • 前半:屈折の法則の説明.
  • 後半:レンズの面で屈折する光線の考察からレンズの仕組みを扱う.

11. 05千葉:干渉

  • 2波源からの波の干渉.
  • 任意の位相差がある場合についても扱う.

12. 14新潟:ロイドの鏡

  • 鏡による反射を利用したヤングの実験の変形版(ロイドの鏡).
  • 反射光の到達範囲を考える非典型的設問がある.

13. 21福井:反射型回折格子

  • 反射型の回折格子.

14. 09茨城:ニュートンリング

  • ニュートンリングの基本と応用.

15. 11筑波:薄膜

  • 薄膜による光の干渉について.

16. 04千葉:マイケルソン干渉計

  • マイケルソン干渉計について若干の応用.

17. 08筑波:レンズ

  • 前半はレンズの公式の作図についての基本的な問題.後半はレンズの組み合わせで平行光線を作る
  • 興味深い内容の非典型問題.

18. 15筑波:凹面鏡

  • レンズの応用として凹面鏡を扱い,空所補充形式で凹面鏡の公式を導く,筑波大ではおなじみの
  • 作図にもとづいた基本的な問題※1.最後の作図は,虚像の意味を理解していることが大切.

※ 課程の切り替わりがあった出題当時,旧課程の教科書には凹面鏡の公式は載っていなかった.しかし,凸レンズや凹レンズと同じように,相似比を利用して倍率を2 通りに表す方針をとればよく,丁寧な誘導もついているため,旧課程の受験生が特に不利にならないように配慮されていたようである.

原子物理分野

1. 03名城:光電効果

  • 光電効果の典型問題.

2. 02筑波:コンプトン効果

  • コンプトン効果の典型問題.

3. オリジナル:ボーア模型

  • 水素原子のボーアモデルの典型問題

4. 05筑波:X線

  • X線の発生.
  • ブラッグの条件.

5. 04岩手:核崩壊と核反応

  • 各種崩壊.
  • 崩壊系列と半減期.
  • 年代測定.
  • 核分裂.
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