入試物理の思考地図
思考地図とは,入試物理の全体像を俯瞰し,各設問の解法を論理的に決定する思考法を整理したものです.詳しくは解説動画をご覧ください.
参考資料
『真の特講』活用ガイド
◆ テキストまえがきより
『真の特講』は,基本的な手法を一通り学んだ後に,
* 各手法を再確認し,定着を図ると同時に,それらを体系の中で位置付ける
* その土台の上で,初見の問題の解法を選択できるようになる
ためのものです.
この教材には,原子物理を除く高校物理の全範囲の問題を,入試問題の解法を選択する上で必要となる考え方を網羅するように並べてあり,これらの問題を扱うことで,自然な形で前述の目標が具象化されるようにしてあります.不必要な誘導が省いてあるため,難しく感じられるかもしれません.しかし,すべて基礎的な考えに基づいた問題であり,余計な設問を省いて,効率的・効果的に勉強が進むように設計してあります.また,設定や問題文を出来る限りシンプルにすることで,物理の理論そのものの理解を問い,「問題文の読解」に余計な力を割かなくてよいように配慮してあります.
取り組む時期については,A のついたセクションが夏,B のついたセクションが秋~冬頃をひとつの目安としてください.もちろん余力がある方は,自分のペースで先に進んで構いません.
予習の際には,時間無制限で問題に向き合ってみてください.ただし,20 分程度かけても歯が立たない場合には,それ以上無理に考え続ける必要はありません.問題を解いた後,問題の最後尾に《指示》がついている問題に関しては,そちらにも従ってみてください.
次に,ページをめくると,《解答》の前に《方針》があります.これは,解法を決定する際の思考プロセスを示したものです.自力で解けなかった問題も,この《方針》を読んで,もう一度取り組んでみて下さい.それも済んだら最後に,《解答》を読み,解けなかった所・解答を読んでも分からなかった所を洗い出しておくこと.なお,問題文をよく読んで(出来れば音読し),ノートに図を描きながら考えることを忘れずに(一部の問題の図は敢えて省略してあります.文章から状況を図示する訓練もまた大切)!
◆ 問題概要[力学A]
物理の土台となる力学.その力学の土台となる部分を扱います.優先的に取り組んで欲しい部分です.
1. 滑車とばね
- 動滑車の関わる束縛条件.
- ばねにつながれた糸の張力,糸がたるまない条件.
- 仕事の計算,系の見方.
- 単振動.
2. ベルトコンベア上の物体の運動
- 一定速度で動くベルト上の物体が受ける摩擦.
- エネルギーと仕事,系の見方.
- 初期位相を考慮すべき単振動.
3. クーロン力を受ける物体の運動
- 時間追跡不可能な運動の取り扱い.
- つりあい点付近での微小振動.
- 可動領域.
- 大雑把に捉える:運動の定性的把握.
4. 天体の運動
- 万有引力の下での天体の運動.
- 円軌道の定石.
- 楕円軌道の定石,ケプラーの法則.
- 非典型設定:双曲線軌道も定石で扱える.
5. 斜面と壁に挟まれた物体
- 面による束縛.
- 時間追跡 / エネルギー収支.
- 仕事の計算,系の見方.
6. 半円状の曲面を持つ台
- 2物体系全部入り(重心絡み除く).
- 強制外力で動かす:見かけの重力,外力の仕事.
- 2体問題:保存則と束縛条件の連立,相対円運動.
7. 三角台と小球の衝突
- 固定面斜衝突,力積.
- 三体衝突のモデル.
◆ 問題概要[力学B]
浮力や剛体など力学の中でも後回しにしてもよい部分を扱います.ある程度の実力がついてから取り組むべき部分でもあるので,焦らずに取り組んでください.
8. 浮力を受けた物体の運動
- 浮力の下での単振動.
- 外力の仕事.
- 浮力の位置エネルギーの解釈.
9. 渦巻き運動
- 面積速度保存則と全体のエネルギー保存則の連立.
- 運動の定性イメージ.
10. ばねで連結された2物体の運動
- 力積と仕事,系の見方.
- ばね連結2物体の時間追跡.
11. 棒で連結された2物体の運動
- 保存則による取り扱い.
- 重心系での取り扱い.
12. 円板の回転運動
- 剛体のつりあい.
- 剛体の運動.
◆ 問題概要[熱力学A]
熱力学の根幹をなす部分を扱います.基本と例外に対応する1と2は特に優先して取り組んでください.
1. ばねつきピストンで封入された気体
- 熱力学の基本思考と例外処理(非平衡過程).
- 系の見方.
2. 気体ばね
- ピストンが動く際の取り扱い.
- 微小振動,微小ではない振動.
- 断熱変化.
- 力学的準静過程と熱力学的準静過程.
3. カルノーサイクル
- 定積モル比熱,比熱比,内部エネルギーの表式.
- 熱効率.
4. 気体分子運動論
- 気体分子運動論の基本.
- 応用:スペクトルの揺らぎの分子運動論的説明.
◆ 問題概要[熱力学B]
5. 気体の密度勾配
- 気体の圧力分布.
- 近似の妥当性:差を測定すると高精度.
6. 液体と接する気体の熱現象
- 難関大頻出設定,系の見方.
7. ひも状物体の熱力学
- 理想気体以外の物体の熱力学.
◆ 問題概要[電磁気A]
電磁気の中でも電気分野を扱います.入試では出来の悪い分野ですが,体系的に扱うことで得点源にすることができます.
1. 2つの点電荷の作る電場中での点電荷の運動
- 点電荷の作る電場.
- 時間追跡できない運動.
- 可動領域.
- 微小振動.
2. 帯電球内部での運動
- 拡がった電荷分布の作る電場.
- 電位の基準.
- 可動範囲.
3. 太陽電池
- 回路の状態の決定:まずはキルヒホッフ則.
- 未知の素子の取り扱い例として太陽電池を扱う.
4. コンデンサーとダイオードからなる回路
- コンデンサ回路の切り替え(コッククロフト=ウォルトン回路).
- 回路の状態の決定:電荷保存則とキルヒホッフ則の連立.
- 無限回後の取り扱い.
5. はく検電器
- 定性的理解は定量計算に支えられる.
6. コンデンサーの充電・放電
- コンデンサ充電におけるエネルギー収支(典型と非典型).
- 過渡現象.
- ジュール熱の分配.
7. 3枚の金属板
- 内部構造の見えるコンデンサ.
- 極板間引力.
8. 誘電体の受ける力
- コンデンサへの誘電体の挿入.ただし.非典型的配置
- 誘電体が受ける力.
◆ 問題概要[電磁気B]
電磁気の中の磁気分野を扱います.電磁気Aのセクションをしっかりと身につけた上で取り組んでください.
9. 電磁場中の電子の運動
- 与えられた電場・磁場中での荷電粒子の運動の基本と応用.
- 入試的扱いと微分方程式を解くこと.
10. 静磁場中の正弦波形レール上を動く導体棒
- 静磁場中を動く導体棒のタイプの電磁誘導.
- レールの形状が非典型.
- 交流も登場.
11. 円形導線の近くで動く磁石
- 磁場が時間変化するのタイプの電磁誘導.
- 磁石が受ける力をどう求めるか.
12. ソレノイド内に生じる誘導電場
- ソレノイド内の磁場.
- 誘導電場を求める手順.
13. 変圧器
- 相互誘導の復習.
- 論理的思考法.
- 相互誘導におけるエネルギーの理解.
◆ 問題概要[波動A]
波動分野でも力学的波動の部分を扱います.
1. 疎密波
- 振動グラフと波形グラフ.
- 応用的な問題だが基本に忠実に.
2. 弦の固有振動
- 進行波・定常波の式.
- 弦の固有振動,うなり.
- 弦を伝わる波の力学モデル.
3. 流れのある液体中の音波
- 流れのある液体中でのドップラー効果
◆ 問題概要[波動B]
波動分野でも光波の部分を扱います.
4. プリズムによる光の屈折
- 屈折,全反射.
- 光の分散による色づき(虹と同様のしくみ).
5. 球形レンズ
- 非典型形状のレンズの式を作る.
6. 複数の波源からの波の干渉
- 複数の波源からの波の合成波を定量的に扱う.
7. フレネルの輪帯板
- 等間隔でない多重スリットからの回折光.
- 光の強度とエネルギー.
8. 単スリットによる光の回折
- 単スリットのいろいろな見方.
◆ 過去の受講者アンケートより
力学A・熱力学A
- 今まで受けたどんな物理の授業よりも体系的だった.
- なぜその方法がとれないのか/その方法をとるのかをしっかり説明してもらえるので,納得して進めて良かったです.
- 物理をこんなに体系的に教わったことがなかったので,この科目に大いなる希望を見出せました.
- 力学・熱のポイントが凝縮されていて素晴らしかった.束縛条件や座標系の乗り換え,仕事の怪しかったところも解消されてよかった.
電磁気A・波動論A
- こんなに面白い電気の授業があると思わなかったです.
- どういう理由からその解法になるのかがハッキリとしました.
- 今までコンデンサーはどの参考書でも読んでも明確な理解ができたとは言いづらいと感じていましたが,今までよりも深い理解ができたと思います.
- 問題の難易度は今まで解いてきたものに比べてかなり難しく,予習では全く解けないものもありましたが,授業では基本からやるので,すぐに理解でき, あまり難しいと思わずに解けるようになりました.
- マイケルソン干渉計から重力波に至るまでの話が特に面白かったです.
力学B・熱力学B・電磁気B・波動B
- はじめて見るような問題が多くて楽しかったです.
- 初見の問題に対して,基本的な知識をどのように使ってアプローチすべきか,分かりやすかった.
- 入試問題の解法パターンが整理されていて,必要な定石を一気に確認することができ,頭の中がすっきりしました.
- 一年を通して,初見の問題でも条件を読み取って自分の持っている手札の中から選べば必ず解けると思えるようになりました.
- 某予備校の通年授業より,『真の特講』の方が内容が濃かった.