◆ 共テ物理の全体像
2次学力重視
センター物理と比べて,共テ物理は問われる学力が2次学力へ近づいていると感じます(その傾向は年を追うことに深まっています).実験や探究の問題が増えたため,見かけ上の変化に気を奪われがちですが,出題テーマは難関大入試で扱われるようなものが増え,物理としてはより深い理解が求められるようになっています.そのため,2次学力の高い難関大受験生にとっては,センター物理より共テ物理の方が取り組みやすいかもしれません.逆に,標準レベルの受験生にとってはかなり難しく感じられることも多いのではないかと思います.
試験時間は充分だが思考力が問われる
計算量はセンター物理より軽減され,解法の判断に迷いすぎることさえなければ試験時間は充分にあると言えるでしょう.逆に,思考力(=解法の判断力)が問われることは増えました.
※ 難関大の2次で出てもおかしくないテーマで,解法の判断のみを問うような問題も多く出題されています.
難関レベルの受験生へ
センター物理よりむしろ取り組みやすくなった印象を受ける受験生も多いかもしれません.充分な2次学力がある受験は,ケアレスミスを防いだり,共テ特有のポイントを押さえる練習をした上で過去問演習を行えば,充分な対策となるでしょう.
標準的な受験生へ
本番前の共テでこんなに難しいの?と焦ることもあるかもしれません.しかし逆に言えば,共テで取れれば,2次でも取れます.地に足のついた学習を積み重ねて,基礎学力を上げていくことが肝要です.なお,共テ物理では幅広い難易度の設問が作られています.そこで,試験本番では,自分にとって難しい問題は時間をかけすぎずに,飛ばすことも必要になるかもしれません.なお,難しい設問ほど選択肢が少ないことが多いです(適当にマークして先に進みましょう…).
※ 共テ物理は,センター物理より総体的な難易度が上がっています.ではなぜ,平均点が大きく下がったりしないのでしょうか?それは,難しい設問ほど選択肢の数を絞っている(偶然当たる確率を上げている),というカラクリがあります.最近は選択肢の数が増えつつありますが,それでもすぐに少数の候補に絞れるように作ってあったりします.
◆ ケアレスミスの類型
センター物理において,高学力層が思わぬ失点をしてしまうような問題のタイプは,おおよそ次のように大別できました.これらの特徴は共テ物理でも(2次でも)変わりません.
- イメージに囚われてミスるタイプ
- 複数の条件を連立するタイプ
- 頻出問題とよく似ているが少し異なるタイプ
もちろん単純に物理としての難易度が高いために低正答率となった問題もあります.以下では,各タイプの詳細と対策について述べていきます.
イメージに囚われてミスるタイプ
グラフや文章の選択問題,定性的な問題で,選択肢に引っ張られて,イメージに頼り,論理がおろそかになってしまうことがあります.「選択肢から感覚的に選ぶ」というのが最悪の対処法で,「記述式問題と同じように,論理的に数式を用いて考える」のが大切です.
複数の条件を連立するタイプ
物理の入試問題では,設問1つに対して,式を1つ立てれば解答にたどりつく,ということも少なくありません.複数の条件を連立するタイプの問題は(センター試験に限らず)正答率が低くなります.例えば,次のような問題などがあります.
- 屈折の問題で,屈折の法則と図形的な関係式を連立する.
- 回路の問題で,電荷保存則とキルヒホッフ則を連立する.
- 電磁誘導の問題で,キルヒホッフ則と運動方程式を連立する.
ここでも大切なことは,選択肢が目に見えているからと言ってなめたりせず,記述式の問題のつもりで考えることです.さらに言えば,その物理現象を支配する法則(そのタイプの問題の解法)をきちんと考えることです.試験場で焦っているときには,あたり前のことをあたり前にやる,ということが疎かになりがちです.普段から意識しましょう.
頻出問題とよく似ているが少し異なるタイプ
試験場で見たことあるような問題に出会えば,安心しますよね.そういうときに「あぁあれか」という思い込みがミスを生みます.知っているような問題であれば,どうせ手早く解けるのですから,焦ってうろ覚えの答えを当てはめるのではなく,イチから計算しなければなりません.
◆ 共テ物理で特に注意したいこと
問題文の読み方
図を見てどのような問題か分かっていまうことも多いですが,思い込みで勘違いすることもあります.予断を持たずに読みましょう.
一方で,現実の現象を素材として取り上げる,仮説や実験を取り上げる,会話形式にするなど,センター物理と比べて問題文自体が煩雑化しています.大事なことは「要は○○の問題であると見抜くこと」です.このタイプの問題では,これは全反射の問題だ,とか,電磁誘導の問題なんだと分かった上で,余計な文章を軽く読み流してしまえば,普通の問題に見えてくるはずです.また,このような問題文を読む際にも,予断をもたないことも大事です.
特に,複雑な設定の問題では余計な情報を捨象していかないと混乱してしまいます.要は何を聞いているのか,その物理現象の本質と対応する法則についてまず考えましょう.どのような典型問題と対応するのかという考え方も有効です.
選択肢の読み方
選択肢を読み込みすぎると,「これっぽいな」という予断を持ってしまい間違うことがあります.軽く眺める程度がよいです.
文字式の問題では,使って良い文字のチェック程度に.
※ この文字の組み合わせは運動量保存ぽいな…というような読み方は誤りです.
数値計算の問題では,どの程度正確に計算すればよいのか判断できると,計算が簡略化できることがあります.しかし,不安な場合は桁数多めで計算すればよいでしょう.
文章選択問題の場合は特に,読み込みすぎると騙されるので注意.また,正しいものを選ぶのと誤っているものを選ぶのは取り違えやすいです.特に,複数の内容の正誤の組み合わせを表から選ぶ問題でマークミスしやすいので,正誤問題はマーク前にもう一度確認するとよいでしょう.
実験などのデータ処理の問題
まず,データが従う法則・式を書きくだす.グラフからの読み取りでは,値そのものを読む他に,傾きと面積を読みとることがあります.またその際に近似を行うこともあります.
グラフからいきなり情報を読み取ろうとせず,どんな関係式を表すグラフなのかを考え,対応する式を立式することが先決です.
定性的な問題
いつも通りやりましょう.記述式問題と同じように定量的に考える.つまり,具体的な式を書いて考えることが大事です.必要に応じて自分で文字を置いて計算する必要があることが大変かもしれません.どうしてもイメージをしなければならないときには,極端な状況をイメージするのがコツです.
現象理解を問う問題
成り立つ法則を問われたり,公式の導出を問うような問題も出題されています.通常の学力があれば答えられるはずですが,誘導に従う練習ばかりだと苦しくなるでしょう.法則の成立条件や導出過程,解法判断の際の思考法を普段からきちんと学んでおくべきです.これも選択肢に惑わされる場合が多いので,記述式であればどのような式を立式するか,というような考え方をするのがよいでしょう.
部分と全体
どの部分を系と見るかにより計算が速くなる問題がよく出題されています.ただし,時間には比較的余裕があるので,いざとなれば部分ごとに考えてしまいましょう.
誤差の問題
- 誤差(絶対誤差)=測定値ー真の値
- 相対誤差=絶対誤差/真の値(or測定値)×100%
- 系統誤差 (systematic error) :理論の不備,測定器具の不備,測定者の癖による.
- 偶然誤差 (Random error) :ランダムに起こる.
- 測定器を利用して物理量を測定する場合,最小目盛りの1/10まで読む.
- 有効数字の計算の仕方も念のため押さえておく.
- 測定値$X$から他の量$Y=f(X)$を求める際に,$X$の誤差がどのように$Y$に波及するか.
電磁気分野と原子物理分野について
電磁気分野と原子物理分野は学習が追いついていない受験生が多く,正答率が低くなりがちです.原子物理分野も必ず出題されていますが,最低限の典型問題が理解できていれば解ける問題しか出ていませんので,是非疎かにしないでください.
◆ 過去問解説記事
共テ物理の過去問解説記事へのリンクをまとめておきます.
※ 解説動画は対策講座『共テ物理LS』にて提供しています.
◆ 予想問題への取り組みについて
過去問演習が済んだ後は(もしくは並行して),各社が販売している予想問題に取り組む方も多いでしょう.ただし,クオリティにブレがあるため(実際の共テと比べて作問にそこまでの労力をかけられていない),学習効率が高くないと感じます.実践慣れという意味で取り組むことはよいと思いますが,傾向の偏りを防ぐため,複数の団体のものに取り組むのがオススメです.
※ どうしても会社ごとの「色」が出てしまうため,特定の会社のものに偏らないことが必要に感じます.
※ 基礎学力が低い場合,予想問題のようなものにくり返し取り組んでも,基礎が身に付かないまま時間を浪費するので,注意してください.
◆ 『共テ物理LS』講座案内
ここでは,JUKEN7の共テ物理対策講座である『共テ物理LS』に含まれる内容について紹介します.
※ 2024年度版は,過年度版とほぼ同内容です.
I. 自習用教材「共テレベル問題集」
まっとうな受験生は,共テ特有の対策に入る前に,基本の確認や共テと同レベルのアウトプット練習を積みたいと思うことでしょう.そこで,全分野全単元を網羅した自習用問題集(90題,200頁超)「共テレベル問題集」を付録しています.
センター物理も共テ物理も幅広い分野から出題されるため,知識・スキルの抜け漏れを作らないことが重要です.実践的なアウトプット練習のつもりで進めていく中で,苦手テーマや知識の抜けなどが見つかった際には,基礎に立ち戻り強化してください.このことが,2次学力の向上にもつながってくることでしょう.
※ こちらは,講師笠原が駿台時代に締切を続発した講座「センター物理クライマックス」(現「完答を目指す共通テスト物理」)のテキストをブラッシュアップしたもので,2022年度版と同内容です.
※ こちらの質問は,JUKEN7 Communeにて随時お受けしています!


II. 分野ごとに集中した演習「〇〇1000本ノック!!」
2015年〜2020年の間のセンター物理の過去問には良問も多く,学習効果が高いと感じます(2014年以前は課程が異なる).こちらに取り組むのもオススメ!ということで,力学・熱力学・電磁気・波動・原子物理の各分野のセンター試験の過去問(2015年~2020年の本試験・追試験すべて)を一気に演習・解説する講義を作成しました.
「共通テレベル問題集」に続いて,抜け・漏れや弱点を見つけたり,演習量を増やすのに最適です.動画内で問題も映している動画完結型なので,紙と鉛筆(とスマホ)だけで受講することができます.
※ 時間が足りない場合は「共通テレベル問題集」とどちらか一方を優先し,他方は分野を絞って受講するのもよいでしょう.
III. ケアレスミス対策講義
センター物理で特に正答率が低い問題の傾向を分析し,ケアレスミスを減らすために作成した講義です.共テ物理でも(2次でも)そのまま役に立つ内容です.
※ この部分は,2020年冬に行ったLIVE講義(60分×3コマ相当)のVTRです.
※ 目標得点が8割程度以下であったり,現状の学力が大きく不足している場合は,このような対策に時間を割くより,基礎学力の錬成に時間を割いた方が効率がよいでしょう.
【受講者の声】
* 二次試験ではあまり触れられない盲点を効率よく学習できました.
* 選択肢に目が行きがちだったが考えが変わった.
* 自分がマーク模試でよくやってしまうミスが結構あったので,非常にためになりました.
* 「なぜ正答率が低くなるのか」を分析しながら学べるのが面白かった.
* 自分でも意外なほど間違えました.しかし,間違いのパターンが見えた気がします.
IV. 電磁誘導の定性問題攻略講義
センター物理時代に低正答率であった「電磁誘導の定性問題」は,共テ物理でも繰り返し出題されています.また,難関大対策としても重要なテーマであるため,特化した対策講義を作成してあります.
V. 共テ物理過去問解説講義
共テ物理の過去問の解説講義も付録しているので,過去問演習時に分からないことがあっても安心!直前期にありがちな質の「低い解説を読んで混乱する」なんていうことも防げます.
※ 2021-2024年の本試・追試とH30年度試行調査のすべてを含みます.
◆「共テレベル問題集」誤植
m(_ _)m



【旧資料】センター物理の正答率
2015年〜2020年のセンター物理(本試),および共通テスト物理H30試行調査の正答一覧です.付した色は次の意味です.
無色:高正答率 緑:やや注意 黄:注意 赤:危険
7割〜8割程度を目標とする方は,無色〜緑で誤ってしまった所を重点的に復習しましょう.逆に高得点を狙う方は,黄〜赤を要チェック!






