本稿の前半では,入試物理における原子物理分野の学習法について,一般的な戦略を解説します.効果的に理解を深め,効率よく学習したい受験生にオススメです.後半では,具体的な実践の例として,JUKEN7物理講座『基幹物理③』原子物理分野の活用ガイドを紹介します.受講検討中の方・既に受講中の方は,是非参考になさってください.
原子物理の学習戦略 -全体像-
19世紀後半から20世紀前半にかけて,それ以前の物理学(古典物理学)で説明できない現象が発見され,それが徐々に説明されていくことで,新しい物理学の理論(量子論や相対論)が建設されていきました.原子物理分野では,その歴史的な過程における有名実験や仮説について学びます.
重要問題例のマスターだけで満点を狙える
完成された理論体系を学ぶわけではなく,問題ごとに必要な考え方を覚えていかねばならないことに注意してください.全体が整合的で論理的な体系になっているわけではないことに戸惑う受験生も多いようです.
一方,各問題で扱うテーマは基本的に当時のもの(かつ,高校物理で扱えるもの)に限られるため,問題パターンが非常に少なく新奇な入試問題はほとんど存在しません.つまり,重要な問題例をしっかりマスターしておけば,ほとんどの場合に満点近くを狙うことができます.
短期間で集中的に学ぶのが効果的
この分野は他分野の知識も使うので,焦って先にやろうとするよりも,他分野の実力が備わった後に短期間で集中的に学ぶのが効率よく効果的です.ただし,対策が遅れがちな受験生が多い一方で,実際に出題されると得点しやすいため,必ず共テ前までに対策をしましょう.
難関大受験生は…?
標準大と難関大で出題に大差はありません.最難関大で,細かい知識が問われたり,見慣れない設定の出題がされることが稀にあります.しかし,そこで合否を分けるようなものではないでしょう.
原子物理の学習戦略 -単元別ガイド-
原子物理の準備
- 電子にまつわる有名実験として,トムソンの実験とミリカンの実験を扱う.
- ミリカンの実験におけるデータの扱い方は知っておく必要あり(それ以外は電磁場中での荷電粒子の運動の範疇).
- 電子の加速や単位eV(電子ボルト)についての常識も身につける.
光の粒子性
- 光子の運動量とエネルギーの公式を押さえた上で,光電効果とコンプトン効果の典型問題を扱う.
- 光電効果では,光電子が飛び出すメカニズムと光電子のエネルギーの測定の2つのポイントを押さえる.
粒子の波動性
- 物質波(ド・ブロイ波)の波長公式を押さえ,干渉実験を扱う.X線と対比して学ぶとよい.
- ブラッグ反射についても扱う.
原子核
- 原子核にまつわる用語・知識をまず押さえる.
- 原子核反応と原子核崩壊について扱う.
※ 化学と重複する知識も多い.
『基幹物理③』原子物理分野 活用ガイド
◆『基幹物理*原子物理』収録講義一覧
※ 原子物理分野に関しては,問題のバリエーションが非常に少ないため,標準演習と典型入試演習の区別なく,ただ「演習」としています.
※ ×印の問題は現状では解説動画がありません(テキストに詳しい解説がついています).受講者の方からの要望があれば作成していく予定です(Communeにてご要望お寄せください).