【入試物理の思考地図】原子物理の公式と解法パターン
最終更新:
物理定数
- 真空中の光速:$c \approx 3.0 \times 10^{8}\ \mathrm{m/s}$
- プランク定数:$h \approx 6.6 \times 10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}$
- 電気素量:$e \approx 1.6 \times 10^{-19}\ \mathrm{C}$
- エレクトロン・ボルト:$1\ \mathrm{eV} \approx 1.6 \times 10^{-19}\ \mathrm{J}$
- 原子質量単位:$1\ \mathrm{u} = \dfrac{1}{12} \times (\mathstrut^{12}\mathrm{C}\ \text{原子の質量}) \approx 1.66 \times 10^{-27}\ \mathrm{kg}$
※ 電子が $V$ だけ高電位の所へ走ると,運動エネルギーが $eV$ 増える.
※ 1 eV は,電子が 1 V の電位差で加速された際に得る運動エネルギーに対応する.
※ 核子1個の質量は 1 u 程度.
光の粒子性
光子(フォトン)の性質
- 振動数 $\nu$,波長 $\lambda = \dfrac{c}{\nu}$ の光子のエネルギー・運動量の大きさ:$E = h\nu = \dfrac{hc}{\lambda}$,$p = \dfrac{h}{\lambda}$
光電効果
- 金属に波長の短い紫外線などの光(電磁波)を当てると,光電子が飛び出す現象.
- 金属内の自由電子が光子を吸収することでエネルギーを受け取って飛び出すと解釈する.
- 光電子の最大運動エネルギー:$K_{\mathrm{max}} = h\nu - W$
※ 仕事関数 $W$ は,自由電子が金属外部に出るのに必要なエネルギーの最小値.
※ 光を波として扱うと光電効果が上手く説明ができない理由は,「当てる光の振動数がある値(限界振動数)より小さいと,いくら光を強くしても光電子は飛び出さない.一方で,光の振動数が限界振動数より大きいと,光が弱くても光電子が瞬時に飛び出す」ことや,「光電子の運動エネルギーの最大値は,光の振動数で決まり,強さには依らない.一方で,光の強さを強くすると,飛び出す光電子の数が増える」こと.
コンプトン効果
- X線を物質に照射すると,出射するX線の一部の波長が伸び,電子が散乱される現象.
- 光子と電子の弾性衝突によると解釈し,運動量保存則とエネルギー保存則を連立する.近似計算にも注意.
物質の波動性
物質波(ド・ブロイ波)
- 運動量の大きさ $p$ の微粒子の物質波長:$\lambda = \dfrac{h}{p}$
原子の構造
水素原子のボーア・モデル
- 陽子のまわりを電子が等速円運動している.
- 量子条件:軌道の周回の長さが電子波長の整数倍になるときに限り,定常状態となり電磁波を出さない.
- 振動数条件:電子がある軌道から別の軌道へ移るとき,エネルギー準位の差に等しいエネルギーの光子1個をやりとりする.
※ ここでの量子条件は,元々のボーアの主張である「電子の軌道角運動量の大きさが $\dfrac{h}{2\pi}$ の整数倍である」を言い換えた表現.
※ 水素原子に限らず,一般の原子内の電子の軌道半径はとびとびの値を取り,対応するエネルギーもとびとびの値となる.このように原子が実際にとりうるエネルギーの値をエネルギー準位という.その結果,原子から放出される光(電磁波)の波長は原子特有のものとなる.
X線の発生
- 高電圧で加速した電子を物質に入射させると,2つの異なる仕組みに基づいてX線が発生する.
- 連続X線:物質中で電子が減速されて,運動エネルギーを失い,そのエネルギーの減少分に対応した色々な波長の光子が放出される.
- 固有X線(特性X線):高速の電子が原子に衝突して内側の軌道の電子をたたき出す.すると空いた軌道へ外側の軌道の電子が落ちる.その際にそのエネルギー準位の差に等しいエネルギーを持つ光子が放出される.その波長は原子の種類で決まる.
ブラッグ反射
- 物質の結晶にX線や電子線を入射し,散乱波の干渉の様子から,内部構造を探ることができる.
- 散乱波が強めあう条件は,隣り合う格子面で反射された波が同位相になること.
原子核
質量とエネルギーの等価性
- 質量 $m$ に対応するエネルギー:$E = mc^2$
原子核の成り立ち
- 原子核は,核子(陽子と中性子)が核力により結合してできている.
- 核力は陽子間のクーロン斥力より圧倒的に強いが,核子数個分程度のごく近距離でしか働かない.
- 質量数60程度(鉄・ニッケル付近)の原子核が最も安定で,それより軽くても重くても,核子1個あたりの結合エネルギーは小さくなる.
原子核の質量欠損と結合エネルギー
- 原子核の質量は,バラバラの核子の質量の合計より小さくなる.
- 原子番号 $Z$,質量数 $A$,質量 $M$ の原子核の質量欠損:$\Delta M = Zm_{\mathrm{p}} + (A - Z)m_{\mathrm{n}} - M$
- 結合エネルギー:$B = \Delta M c^2$
※ $m_{\mathrm{p}}$ は陽子質量,$m_{\mathrm{n}}$ は中性子質量である.
※ 結合エネルギーは,原子核をバラバラの核子にするのに必要なエネルギーを表す.
原子核崩壊
- 不安定な原子核は,放射線を出して別の原子核(またはより安定な状態)へ変わる.特によく起こる以下の反応を核崩壊とよぶ.
- $\alpha$ 崩壊:
$$ \mathstrut_{Z}^{A}\mathrm{X} \to \mathstrut_{Z-2}^{A-4}\mathrm{Y} + \mathstrut_{2}^{4}\mathrm{He} $$
- $\beta$ 崩壊:
$$ \mathstrut_{Z}^{A}\mathrm{X} \to \mathstrut_{Z+1}^{A}\mathrm{Y} + \mathrm{e}^{-} + \bar\nu_{\mathrm{e}} $$
- $\gamma$ 崩壊:励起状態の原子核が,エネルギーの高い光子($\gamma$ 線)を放出して,基底状態に落ち着く.
- 核崩壊における残存核数(半減期 $T$):
$$ N(t) = N(0)\left(\frac{1}{2}\right)^{t/T} $$
※ $\alpha$ 崩壊では,$\mathstrut_{2}^{4}\mathrm{He}$ 原子核($\alpha$ 粒子)を放出し,原子番号が2,質量数が4減少する.
※ $\beta$ 崩壊では,電子($\beta$ 線)と反ニュートリノを放出し,原子番号が1増加する(質量数は変わらない).高校物理では,ニュートリノは詳しく扱わない.
※ $\gamma$ 崩壊では,核種は変わらない(原子番号も質量数も変わらない).